2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of hydrogen controllabel GMR multilayer
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18K04745
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
赤丸 悟士 富山大学, 学術研究部理学系, 助教 (10420324)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 磁性多層膜 / 水素 / 磁気抵抗 / パラジウム合金 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はPdCo/Cu/Co多層膜(PdCo中のCo濃度20%)を電子ビーム蒸着により構築し、水素に対する電気抵抗変化を調べた。磁場を印可した状態での水素吸収による電気抵抗変化は、ゼロ磁場の場合に比べ5%程度の増加を示した。これはPdCoが水素を吸収し磁化が減少することで、磁気抵抗の磁場変化が小さくなったことで説明できる。つまり、PdCo/Cu/Co多層膜は水素吸収による電気抵抗変化を増幅できる。しかし、PdCo/Cu/Co多層膜の磁気抵抗はいわゆる巨大磁気抵抗効果のような変化を示さず、PdCo単層膜の磁気抵抗に類似した変化を示した。 PdCo/Cu/Co多層膜の磁気抵抗に磁性多層膜の効果が見られない原因を調べるため、PdCoのCo濃度の影響を調べた。ここでは、PdCo/Cu/PdCoの三層膜を作成し、非結合型GMRの有無を調べた。PdCo中のCo濃度が30%程度までは、わずかにGMRの兆候が見えるが、40%を超えたあたりから明瞭にGMRによる電気抵抗変化を観測できた。一方で、Co濃度40%以上のPdCo薄膜は、大気圧の水素雰囲気下でもほとんど水素を吸収しない。つまり作成した三層膜では、水素による巨大磁気抵抗効果の変化は見られなかった。 PdCoにFeを加えた三元系合金における磁気特性の評価を粉末試料を用いて行った。PdCoにFeを加えると、水素吸収量が減少し磁気特性の変化が小さくなり、また磁気転移温度が低くなる。これらのことは、今回の磁性多層膜の構築には利点とはなりえず、したがってPdCo二元合金が本研究の目的に適しているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点においては、水素による巨大磁気抵抗効果の制御ができる磁性多層膜の構築に至っていない。しかし、PdCo/Cu多層膜は巨大磁気抵抗効果を示すことがわかったので、今後はこの水素制御に焦点を絞り研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
PdCo/Cu磁性多層膜による巨大磁気抵抗効果の水素制御には、PdCo膜の水素吸収量と強磁性の安定を両立させることが必要である。これまでの研究よりPdCoの結晶性の重要性が示唆されている。PdCo合金のCo濃度30-40%を境として三層膜の結晶性に変化が見られ、合わせて巨大磁気抵抗効果の大きさにも変化が見られた。そこで今年度は三層膜の結晶性と巨大磁気抵抗効果の関連に着目して研究を進める。また、三層膜の膜厚の最適化を行うことで、水素に応答しやすい多層膜を検討する。以上より、巨大磁気抵抗効果の水素制御が可能となる多層膜を見出す。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、当該年度での成果報告のための旅費が不必要となったため発生した。次年度の成果発表のための旅費および消耗品の補充に充てる。
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