2022 Fiscal Year Research-status Report
水素含有希土類添加酸化物の発光特性の物理と新規シンチレータ材料応用への展開
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18K04747
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
吉野 正人 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (10397466)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 蛍光体 / 水素 / 希土類 / 酸化物 / シンチレータ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに得られた研究成果に基づいて、添加元素や水素、酸素空孔の影響が見られた系について系統的な実験および計算の結果を整理し、その傾向を明らかにしてメカニズムのモデル化を行うための評価、考察を行った。 Y3Ga5O12(YGG)において、Zn添加により4f-5d吸収ピークが短波長側にシフトしていることからわかるPr3+の5d準位が高エネルギー側へシフトしている傾向と、ホストの吸収スペクトルの変化からわかるZn添加によりバンドギャップが小さくなる傾向から、励起された5d準位にあった電子が伝導帯へ移動するような熱活性のプロセスが増加した可能性を示し、これが4f-4f発光が減少した原因と考えた。また、同様にY3Al2Ga3O12(YAGG)においてもZn添加によりPr3+の5d準位が高エネルギー側へシフトしている傾向がみられたが、バンドギャップが大きく5d-4f発光を示すYAGGにおいてはYGGのような影響よりも活性化エネルギーの増加から5dから4fへの非輻射遷移が減少し、5d-4f発光は増加し、4f-4f発光は減少する傾向となったと考えた。 欠陥準位の働きについて温度依存性にも注目したため、ホストによる遷移スペクトルの温度依存性の違いなどを調べるために、これまでに水素含有試料で測定して水素、酸素欠陥の効果を調べてきたペロブスカイト型酸化物、またパイロクロア型酸化物を例にとってホスト組成、ホストと希土類イオンの組み合わせによる遷移スペクトルの温度依存性の違いについて調べた。特にパイロクロア型酸化物のうち一部の系において添加した希土類イオンが元のイオンよりも小さい場合に存在位置に広がりをもつことが予測でき、これが希土類イオンの遷移スペクトルをブロードにする可能性があると考えた。またこれを実測スペクトルにて確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の進捗状況に加えて、Zn添加Y3Ga5O12、Zn添加Y3Al2Ga3O12におけるPr3+の4f-5d吸収やホスト吸収による発光へのZnの添加効果について、実験結果に基づいてモデルを提案しているため、目標とした進捗の一部は達成したが、水素の影響についてモデルの提案まで達していないため。また、遷移スペクトルの温度依存性についても調べることとしたが、他の系と異なる傾向を示す酸化物系をみいだし、結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの進め方に引き続き、Zn添加Y3Ga5O12、Zn添加Y3Al2Ga3O12におけるPr3+の発光・励起スペクトル測定結果および第一原理計算による欠陥準位の結果から水素、酸素空孔の影響についてその過程のモデルの構築について検討する。特に水素の影響についてモデルの構築を目指す。また、遷移スペクトルの温度依存性についてもパイロクロア型構造において特徴的な傾向が得られているため、引き続き関連の構造や組成を含めて傾向を調べることで、構造や組成とスペクトルの温度依存性の関係を整理する。
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Causes of Carryover |
外部施設利用において測定予定であったが実験計画の変更と感染予防の観点から施設利用を一部控え、実験室における代替の測定などを検討し、予算執行に変更が生じた。また、学会発表の予定の一部を次年度へ変更した。研究計画は遅れがあるものの進展しており、物品・消耗品の購入と成果発表での支出を予定している。
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