2018 Fiscal Year Research-status Report
電子およびフォノン構造同時制御による革新的熱電変換材料の創成とデバイス実証
Project/Area Number |
18K04748
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮崎 秀俊 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10548960)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 熱電変換材料 / 熱伝導率 / フォノン物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホイスラー型Fe2VAl化合物は、擬ギャップの底にフェルミ準位を持つことから、電子やホールをドープすることによりフェルミ準位を剛体バンド的に調整することが可能であり、n-p型ともに高い出力因子が実現する。しかしながら、ホイスラー化合物の開発は高い結晶対称性に起因した高熱伝導率の低減が課題となっている。そこで、ホイスラー型Fe2VAl合金の熱伝導率を第一原理的に計算し、どのような置換元素が最適か、また、結晶粒の微細化による熱伝導率の低減がどの程度、期待できるかを検証し、ホイスラー合金における熱伝導率低減のための開発方針の確立を行った。 熱伝導率の第一原理計算には、電子状態計算をVASP(Vienna Ab initio Simulation Package)、フォノンに関連する物理量をPhono3pyを用いて計算した。また、Ar雰囲気化でアーク溶解により作製したFe2VAl合金を用いてレーザーフラッシュ法による熱伝導率の実験的決定を行い、理論計算の結果と比較を行った。 第一原理計算により求められたFe2VAlの熱伝導率の温度依存性は、100 K以上の温度領域では実験的に決定された熱伝導率とよい一致を示しており、ホイスラー化合物において第一原理的に熱伝導率を計算できることを示唆している。Fe2VAlの累積熱伝導率のフォノン平均自由行程依存性においては、100 nm以下で熱伝導率が大幅に低減しており、10 nm以下では25 %以下まで低減する。この結果からホイスラー型Fe2VAl化合物では、結晶粒微細化や薄膜化によるフォノン平均自由行程の低減が熱伝導率の低減に極めて有効であることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算によるホイスラー合金の熱電変換材料の熱伝導率のメカニズムの解明には至ったものの、その知見を活かした新しい材料群の開発には至らなかった。2年目以降は理論計算を進めるともに、実験研究の方に重点を置き、新しい材料群の探索に努める。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在、第一原理計算から高い熱電変換性能が期待できる材料群の合成を進めている。一部は単相に近い試料の合成条件の確立に成功しているが、一部の試料はいまだ作成条件の確立には至っていない。今後、さらなる作成条件の探索を進めるとともに、作成に成功した試料については、キャリアードーピングによる熱電性能の向上を試みる。
|
Causes of Carryover |
当初購入を予定していた、金属材料の購入費が少なく済んだため。今年度の材料購入費に使用する。
|