2019 Fiscal Year Research-status Report
弦鳴楽器ハープ形状革新的水素分子ふるい分離膜の創製と新規分離機構の解明
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18K04757
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
永井 一清 明治大学, 理工学部, 専任教授 (40350269)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 自己組織化 / 水素社会 / 水素分離 / 膜分離 / 分子ふるい / ポリイミド / 薄膜 / ATRP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、水素社会の実現に不可欠な水素を精製するために、高分子鎖を弦鳴楽器のハープの弦の様に一定間隔で配列させ、弦(高分子鎖)の間を水素分子のみをふるい作用により選択的に透過・分離させる革新的水素分離膜を創製し、その新規分離機構の解明と分離性能の最適化を行うことを目的とする。ポリイミドとメタクリル酸誘導体から成るABA型ブロックコポリマーのA成分のナノ自己組織化作用をハープの両端の棹の固定方法として利用して、B成分の高分子鎖をハープの弦の様に配列させることを特徴とする。従来の高分子膜の溶解・拡散機構に基づく膜材料設計とは異なる弦を弾いて音楽を奏でる様に高分子鎖の振動で水素分子を弾いて分子ふるい作用を促進させる設計と、ゼオライトに代表される無機多孔膜の様な硬いメッシュ形状よりも単位膜面積当たり分離に寄与する面積が大きくなり、かつ柔軟性もある二次元状の薄膜の設計をすることを特徴とする。 本研究は3年計画であり、セグメント鎖長の異なるポリイミド・水酸基含有ポリメタクリル酸ABA型ブロックコポリマーの合成、ナノ自己組織化製膜法の確立、分離膜としての膜構造の最適化と、得られた膜を用いた水素分離特性とその新規分離機構の解明と分離性能の最適化を目的として研究を進めた。2年目である2019年度は、2018年度に合成し製膜した2-ヒドロキシエチルメタクリレート(A成分)とポリイミド(B成分)のセグメント鎖長を変えたABA型ブロックコポリマー膜のガス分離実験を行った。いずれの膜もガスの供給圧力に耐えられずにクラックが生じ破損してしまった。膜内のナノ自己組織化の部位に力学的に弱いヒドロキシエチル基を用いたことによる固有の問題と結論付け、強固な結合が期待できる化合物をA成分として検討した。代替化合物の自己組織化の挙動を検討するとともに、新たなABA型ブロックコポリマーを合成し化学構造を同定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度に水酸基含有ポリメタクリル酸セグメントのモノマーとして、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを選定し、当初の計画通り目的のポリイミド・水酸基含有ポリメタクリル酸ABA型ブロックコポリマーを合成し、製膜することができた。2019年度はそれらの膜を用いてガス分離実験を試みたが、ガスの供給圧力に耐えられずにクラックが生じ破損してしまった。ポリメタクリル酸セグメント(A成分)の含有量を少なくすると、すなわちポリイミド(B成分)含有量を多くするとガス圧に耐えられたが、ポリイミドそのものの特性となり、本研究の狙いとは大きく異なるものであった。 作製した膜に対して水、メタノール、エタノール、水蒸気、メタノール蒸気、エタノール蒸気等を暴露して、自己組織化部位の水酸基の水素結合の再配列も促してみたが、結果は同じであった。熱処理も同様に効果は示さなかった。ガスは所定の圧力で膜表面に対して均等に供給されたとしても、力学的に弱い箇所へ負荷がかかりクラック発生へ繋がっていく。それ故、膜内の自己組織化部位が力学的に弱いヒドロキシエチル基を用いたことによる化学構造固有の問題と結論付け、視野を広げ水酸基に限らず自己組織化作用を発現できる官能基にも展開し、強固な結合が期待できる化合物をA成分として検討した。具体的には、水酸基を有するアダマンチル基含有ポリメタクリル酸、側鎖に自己組織化作用を有する官能基を有するシルセスキオキサン含有ポリメタクリル酸、水酸基を有数する各種多糖類について適応を検討した。多糖類については水酸基に対カチオンを有するものも含めた。これらの代替化合物の自己組織化の挙動を検討するとともに、新たにABA型ブロックコポリマーを合成し化学構造を同定した。一部の生成物については製膜し、膜形態をSEM、POM、WAXD等で膜の構造を解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように、目的のポリイミド・水酸基含有ポリメタクリル酸ABA型ブロックコポリマーを合成し製膜することができたが、ガス分離実験においてガスの供給圧力に耐えられずにクラックが生じ破損してしまった。A成分のヒドロキシエチル基の化学構造固有の問題と結論付け、他の化学構造による自己組織化を検討し、新たなABA型ブロックコポリマーを合成し化学構造を同定した。そして一部の生成物については製膜まで進めることができた。2020年度は、作製した各膜のガス分離実験を実施する。合成、製膜、膜物性評価、水素ガス透過・分離性評価の一連の過程を繰り返し、各段階での考察をふまえ分離性能の最適化を図り、本研究を進行させる。
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Research Products
(4 results)