2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of the mechanism for hydrogen permeation of Pd-free vanadium membrane and application for hydrogen separation from anmonia
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18K04760
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
南部 智憲 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10270274)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属膜 / 水素透過 / 水素分離 / 酸化 / 還元 / 触媒 / バナジウム酸化物 / XPS |
Outline of Annual Research Achievements |
①酸化処理によって生成する表面V種の同定: Pd触媒フリーバナジウム膜を500℃の大気中で酸化処理を行いながら、その場でX線回折測定を行った結果、V2O5の回折パターンが得られた。さらに、膜試料に大気圧の水素ガスを吹き付けて表面を還元処理し、その場でX線回折測定を行った結果、V2O3の回折パターンが得られた。この結果は、水素透過試験後に取り出された膜試料のX線回折測定結果と同じである。X線回折測定では、最表面の詳細なV種の変化を捉えられていないと考え、酸化・還元処理を行ったPd触媒フリーバナジウム膜表面のX線光電子分光分析(XPS)を行った。その結果、酸化・還元処理された膜試料表面のXPSスペクトルはV0+、V2+、V3+、V4+およびV5+に分離できることを明らかにした。各組成比に注目すると、V0+、V2+およびV5+の総量が20%以下であり、V3+およびV4+が約80%を占める酸化状態であった。すなわち、X線回折測定では酸化・還元処理されたPd触媒フリーバナジウム膜表面の結晶構造はV2O3しか検出されていないが、実際には多様なV種が存在することを明らかにした。
②表面V種の機能の解明: Pd触媒フリーバナジウム膜の水素透過試験を行った結果、酸化・還元処理によって初期の水素透過速度が2倍程度高くなった。しかしながら、長時間水素透過試験を継続すると次第に水素透過速度が低下しはじめ、約50時間後には酸化・還元処理材の水素透過速度が無処理材と同程度にまで低下した。水素透過試験結果とXPS測定で得られた表面V種の変化を比較した結果、V0+が大変少なく、V3+>V4+の酸化状態で高い水素透過速度が得られ、水素透過速度が低い状態ではV3+<V4+に変化していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
①酸化処理によって生成する表面V種の同定: XRD測定ならびにXPS測定を行い、Pd触媒フリーバナジウム膜の酸化・還元反応による表面V種の変化を明らかにすることができ、当初の計画通りに研究を進められている。
②表面V種の機能の解明: Pd触媒フリーバナジウム膜の水素透過速度と酸化・還元処理による表面V種の変化との間の関係を明らかにし、高い水素透過速度が得られる表面の酸化状態を明らかにすることができ、当初の計画通りに研究を進められている。
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Strategy for Future Research Activity |
①酸化処理によって生成する表面V種の同定: 膜試料表面の透過電子顕微鏡観察を行い、表面V種と酸化被膜の構造との間の関係を明らかにする。
②表面V種の機能の解明: Pd触媒フリーバナジウム膜への水素の吸着実験によって水素の吸着・吸蔵速度を測定する。また、水素中その場X線回折測定を行い、格子膨張量よりV膜中に溶解した水素量を定量する。これにより、表面酸化被膜が表面反応のどのプロセスに効果的に機能しているのかを明らかにする。
③混合ガスによる水素透過能失活要因の解明と対策: アンモニア分解ガスを模擬した水素・窒素混合ガス(水素:窒素=3:1)を吸着させた試料を用いて昇温脱離試験を行い、膜表面に吸着しているガス成分の定量および吸着状態(物理吸着または化学吸着)を明らかにする。この実験により、窒素ガスが吸着しない条件を見出し、その条件下での水素分離試験を行うことにより、混合ガスからの水素分離を実現させる。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究計画作成当初、混合ガスからの水素分離実験を実施するためにガス混合装置の購入を計画していた。しかしながら、他のガス混合装置を当該研究に利用できるようになったため、本年度でのガス混合装置の購入を見送った。
(使用計画) 酸化被膜の透過電子顕微鏡観察用試料の作製には既設のFIB加工装置では膜構造を破壊してしまい、良好な観察用試料を作製できないことが明らかとなった。そこで、ArミリングあるいはウルトラミクロトームによるTEM試料作製用部材ならびに加工費に次年度使用額を充てる。また、水素分離試験ならびにガス成分の分析に使用するヘリウムガスの価格が高騰しており、価格変動分に対応する。
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Research Products
(1 results)