2019 Fiscal Year Research-status Report
Development of iron oxide thin films with specific hetero-structure self-formed and expression of photocatalytic function
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18K04761
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Research Institution | Research Institute for Electromagnetic Materials |
Principal Investigator |
阿部 世嗣 公益財団法人電磁材料研究所, 新機能材料創生部門, 主席研究員 (20202666)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鉄酸化物 / 特異構造 / スパッタリング / Ge添加 / 光触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、鉄酸化物の特異構造の形成と添加濃度の関係について検討を行った。すなわち、添加元素として、昨年度の検討で最も良好な結果が得られたGeを選択し、濃度を種々変化させて検討を行った。薄膜の作製はRFスパッタリング法を用い、ターゲットとしてFe3O4円盤上にGeチップを設置し、成膜雰囲気としてArを用い、水冷ガラス基板上に成膜した。次いで、773Kで大気中熱処理を行った。特異構造は、薄膜表面にナノスケールの凹凸を有するα-Fe2O3と、内部にGeを含むFe3O4相から構成される。純Fe3O4薄膜を大気中で熱処理すると、酸化が急激に進行し、α-Fe2O3に相変化するため、当該構造の作製には、耐酸化性を発現する元素の添加が不可欠となる。全てのGe濃度において、大気中熱処理時間の増加と共に徐々に酸化が進行し、薄膜の磁化は減少する傾向を示す。また、薄膜の磁化は、Ge濃度に対しピークを伴って変化する。熱処理時間に対し最も耐酸化性を有する濃度は、成膜状態において最も磁化の大きい濃度と一致する。また、焼結体についても検討を行った。すなわち、三種の原料を混合し、プレス成型した後、透明石英管中に真空封入を行った。次いで、1273Kで48h熱処理した後、水焼き入れし、単相の固溶体を得た。次いで、773Kで大気中熱処理を行った。その結果、Geを含まないFe3O4では、熱処理時間の経過と共に急激に磁化が減少し、α-Fe2O3に相変化するのに対し、x=0.2(GexFe3-xO4)では比較的磁化が保持され、耐酸化性を発現する。また、透過型電子顕微鏡を用いた構造観察では、表面にα-Fe2O3相と、内部にGeを含むFe3O4相が形成され、薄膜と類似した構造が形成される。すなわち特異構造は、薄膜や焼結体を問わず、本質的な挙動として形成されることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行に際し、以下の研究項目を設定した。すなわち、1)最適な添加元素の探索と濃度の最適化、2)鉄酸化物ターゲット材料の最適化、3)当該構造を有する鉄酸化物薄膜の光触媒機能の発現。これら一連の研究を通じて、材料創製、構造最適化および機能発現の知見を各項目に有効に反映させ、効率的に推進する。本年度は、1)および2)の研究項目について集中的な検討を行い、実績の概要に示す成果を得た。また、並行して他の項目についても着実に進捗しており、おおむね良好な進捗状況であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに得られた結果を踏まえ,引き続き研究計画を円滑に遂行するよう努める.特に、昨年度の成果において、耐酸化性の発現に最適なGe濃度が明らかになると共に、焼結体においても薄膜と同様に特異構造を自己形成することが明らかになったことから、今後、粉末形状の検討や光触媒機能との関係についても検討する予定である。
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Research Products
(6 results)