2019 Fiscal Year Research-status Report
電圧プリントと選択堆積を用いた汎用ガラスへの光機能創成
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18K04765
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Research Institution | Kitami Institute of Technology |
Principal Investigator |
酒井 大輔 北見工業大学, 工学部, 准教授 (10534232)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ガラス / 構造転写 / 電界処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、物理的・化学的に安定しており、高い透過率を有するガラスの中で、世界的にもっとも普及しているソーダライムガラスに対し、微細な屈折構造を形成し、光学機能を付与する方法の確立と実現を目的とした研究を行っている。4年間での研究遂行に向け、 ・電圧プリント法の確立 ・選択堆積法の発展 ・微細屈折構造の光学機能計算・実装・評価 の3点に着目した研究を計画している。2年目となる2019年度は、まず、初年度に実証した「電圧プリント法」について、より詳しく研究を進めた。本方法では電圧印加時、ガラスと電極の間に樹脂を挟む形で処理を行う。この時樹脂上に形成されている微細な構造が、電極の形状に応じてガラスに転写される。そこで、樹脂に様々なパターンを光学的に形成するため、コヒーレンス長の長いレーザー装置を導入した。また、新たに特注した金属電極を用いたことで、ガラスに転写できる構造の特性について、知見を得ることができ、そのメカニズムについても判明しつつある。ガラス上への構造化として、選択堆積法を試みたところ、電圧プリントで構造転写した領域にのみ微細構造が形成されることを確認することもできた。本技術はJST主催の「イノベーションジャパン」にて展示を行い、光学・材料関連のみならず、モバイル機器や建築関連企業等からも興味を持っていただけた。また、本技術では副次的な作用が得られることが新たに判明した。ガラスと電極間に存在していた樹脂に形成されている微細な構造のアスペクトが、電圧プリントされた領域のみ増幅されていた。本現象は目に見えて微細構造による光学効果を確認できるという特徴があるため、科学研究費補助金研究成果公開促進費への申請を行い、採択された。更に、微細屈折構造について知見を得るため、海洋生物の有する複雑な表面構造の機能を光学計算した論文がジャーナルの表紙に抜擢いただいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の実施計画に基づき研究を遂行し、順調に進めることが出来た。展示会や公開促進費による技術の一般公開、2本の論文発表を行えたことから、当初の目標を上回る成果を上げられたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目となる2020年度は、電圧プリントによる構造転写とその表面構造化に関し、実験を主体とした研究を計画する。本研究テーマ開始当初の予定では3年目から光学計算を開始する予定だったが、想定以上に早く、2年目までの研究の中で光学計算の下地を作ることができた。したがって、本年度の研究では、実験を通してガラス上に実際に形成可能な構造を調べることを中心に進めつつ、光学計算によるフィードバックをしていく計画である。また一方で、新型コロナウイルス感染防止の観点から、もし実験実施に制限がかかるような状況になってしまった場合は、その時点で実施可能な光学計算を中心に研究を進めることで、本テーマ遂行に向けた遅れが生じないよう推進する。
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Causes of Carryover |
レーザー装置について当初の見積もりよりも低くなったため、次年度使用額がわずかに生じた。次年度実施予定の実験用消耗品に充てる計画である。
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Research Products
(6 results)