2018 Fiscal Year Research-status Report
Attempt to create high performance thermoelectric conversion material by use of compositing powder particles with modulating doped carriers
Project/Area Number |
18K04777
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
勝山 茂 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (00224478)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱電変換 / 変調ドープ / 酸化亜鉛 / ゼーベック係数 / 電気伝導率 / 熱伝導率 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電変換材料の高性能化には材料のゼーベック係数Sおよび電気伝導率σを大きく、熱伝導率κを小さくする必要がある。その設計指針としてPBET(Phonon Blocking Electron Transmitting)的特性を示す材料の実現が提案されている。これは熱を伝搬するフォノンを遮断し、電気を伝搬する電子(キャリア)を透過させるような構造を持った材料が優れた熱電変換材料と成り得るというものである。酸化亜鉛ZnO系熱電変換材料についてキャリアの変調ドープを行った粉末試料から成る複合焼結体を作製し、PBET的特性の実現により性能の向上が達成できるかどうかを検討した。 錯体重合法により作製したZn0.98Al0.02O粉末とZn0.9Mg0.1O粉末をモル比でZn0.98Al0.02O:Zn0.9Mg0.1O=100-x:x(x=0,20,40,60)になるように秤量、混合し、ホットプレスにより焼結してZn0.98Al0.02O-Zn0.9Mg0.1O複合焼結体を得た。ここでZn0.98Al0.02O粉末は電気を伝搬する構造、Zn0.9Mg0.1Oはフォノンを遮断する構造に相当する。 Zn0.9Mg0.1Oのモル分率の増加とともに複合焼結体の熱伝導率は単調に減少したが、ゼーベック係数の絶対値は減少した後増加、電気伝導率は増加した後減少する傾向が見られた。熱伝導率の減少はZn0.9Mg0.1O の低い熱伝導率によるためとして理解できるが、 ゼーベック係数および電気伝導率の振る舞いについては、キャリアの変調ドープによる効果のみから説明することはできず、ZnOにおけるAlの固溶域、特にZn0.9Mg0.1OへのAlの固溶域についての検討が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的である、変調ドープ構造の導入によりPBET的特性を実現して熱電変換材料の性能の向上をはかるためには、キャリア密度を制御した均質で微細な結晶粒粉末を作製することが必要であるが、溶液法の一種である錯体重合法により、Phonon Blocking層粉末粒子としてZn0.9Mg0.1O粉末を、Electron Transmitting層粉末粒子としてZn0.98Al0.02O粉末を作製することができた。 これら粉末をホットプレスにより焼結した複合焼結体についてのX線回折による相同定では、ウルツ鉱型のZnO相の回折ピークのほか、一部の試料においてはスピネル型のZnAl2O4相の回折ピークがわずかに認められた。SEMによる組織観察では、焼結体試料は粒径1~3ミクロン程度のほぼ均質な結晶粒から成っていることが観察できた。EDXによる組成分析では焼結時における粒子間の原子拡散が進行していることが確認できた。 複合焼結体の熱伝導率の測定から、Zn0.9Mg0.1O粉末粒子のPhonon Blocking層としての有効性が確認できた。一方で、ゼーベック係数および電気伝導率の測定からは、ZnOへのAlの固溶域がMg添加の有無により影響を受ける可能性のあることが示唆された。この結果は事前に予測されていなかったものであり、今後の検討が必要である。結果としてZn0.9Mg0.1O粉末とのZn0.98Al0.02O粉末の複合化により熱電変換材料の性能を示す無次元性能指数ZTの向上はほとんど見られなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2種類の粉末粒子から成る複合焼結体にキャリアの変調ドープ構造を導入してPBET的特性を実現し、熱電変換材料の性能の向上を達成するためには、組み合わせる2種類の粉末粒子について、(1)価電子帯上部、伝導帯下部のエネルギー準位およびバンドギャップ幅がほぼ等しいこと、(2)Phonon Blocking層におけるキャリア密度が小さく、熱伝導率が低いこと、(3)Electron Transmitting層におけるキャリア密度が大きいこと、などが必要である。 これまで検討を行ってきたAl添加ZnOおよびMg添加ZnOは上記の条件を満たしているが、ともに同じ酸化亜鉛系であるため、高温における焼結過程において粉末粒子間の元素拡散が起こってそれぞれの特性が保持されず、実験結果の解釈が難しいという問題点があった。そこで、これまで行ってきたホットプレス焼結よりもより低温、短時間での焼結が可能なSPS(放電プラズマ焼結)により焼結を行い、粒子間の原子拡散をできるだけ抑えたいと考えている。さらに、原子拡散がおこりにくい化合物の組み合わせについての検討も合わせておこなっていきたい。 また、本課題の研究において明らかとなったMg添加ZnOにおけるAl固溶域の変化については、一般に材料のキャリア密度を制御する添加元素の固溶域は熱電変換材料の性能に大きな影響を及ぼす可能性があることから、非常に重要な検討課題である。そこで、この問題についても27Al NMRなどを用いて詳細に検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
本研究の開始時点では、酸化亜鉛ZnO系熱電変換材料について検討を行う予定であったが、研究を進めて行く過程において、別の物質係においても検討を行う必要があることがわかった。さらに、本研究で研究対象としたZnOではMgを添加することによりZnサイトへのAlの固溶域が変化する可能性があるということが明らかとなった。一般に熱電変換材料において添加元素の固溶域の変化は、その特性に影響を与えるため重要な検討事項であるが、本研究の最終結果にも影響を与える可能性のあるものである。これについての詳細な検討には27Al NMR実験など新たな追加実験が今後必要となる。 以上の経緯から、追加の検討に要する経費として2018年度の経費の一部を次年度使用額として充てることとした。
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