2018 Fiscal Year Research-status Report
水素と相変態との動的相互作用が引き起こす諸現象と機構解明
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18K04780
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
横山 賢一 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80308262)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀部 陽一 九州工業大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80360048)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 腐食防食 / 水素脆性 / マルテンサイト変態 / 破壊 / 生体材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、Ni-Ti超弾性合金およびオーステナイト系ステンレス鋼の水素と相変態との動的相互作用が引き起こす諸現象について、主に材料強度学の観点から調べた。 顕著な脆化を引き起こさない程度の量の水素を添加したNi-Ti超弾性合金において、熱誘起マルテンサイト変態は、応力誘起マルテンサイト変態に比べて、より少ない水素量であっても、熱分析により変態抑制が検出できることを見出した。水素添加量が少なくなると、一回の応力誘起変態と水素との相互作用の影響は引張挙動には現れにくいが、相変態を繰り返し与えることで変態中に脆性破壊することが明らかになった。これは、水素量が少ない場合、水素と相変態との動的相互作用により微視的欠陥が形成されるものの、脆化を引き起こすほどではなく、繰り返し相互作用によって欠陥が蓄積されることによる損傷化が主原因と考えられる。このことは、高倍率の脆性破面観察において、損傷蓄積の影響と考えられる破面形態の特徴が確認されたことからも支持される。 オーステナイト系ステンレス鋼において、低温度域で昇温放出されることなどから固溶状態にあると考えられる水素が、ひずみ誘起マルテンサイト変態を顕著に抑制することで欠陥の生成を助長し、後の塑性変形と水素との相互作用にまで影響を及ぼし損傷となることで脆化に寄与することを示した。脱水素後は、延性が回復することなどから、水素と欠陥とが共存することで損傷として働くことが示唆された。この損傷はεマルテンサイト相に関連したき裂発生の原因となることが考えられる。 本年度の研究で得られた知見は、種々の金属材料の水素脆化の機構解明の手掛かりの一つとなり、実用的観点からも、金属材料の寿命評価やメンテナンスの在り方にも影響を及ぼすだけでなく、新たな材料の開発指針となり得るため、非常に重要であるといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、水素と相変態との動的相互作用が引き起こす諸現象について、予想した内容以上の現象が確認された。得られた実験結果の一部は、当初計画したように学会などで研究成果として報告している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでに得られた水素と相変態との動的相互作用が引き起こす諸現象の特徴に関する知見を材料強度学、電気化学、結晶構造学などの複合的な観点や手法からさらに詳細に調べる予定である。また、その機構解明についても実験を行う予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の研究で取り扱ったNi-Ti超弾性合金やステンレス鋼において、水素と相変態との動的相互作用が引き起こす現象が、研究の初期段階から当初予想した以上に見出され、予定していた追加実験や補足実験などで必要となる消耗品を購入する費用や人件費・謝金を軽減することができたため。 次年度の研究費は、実験消耗品(試験用材料、試験加工用関連物品、試薬など)、旅費(成果発表旅費など)、人件費・謝金(実験補助費、英文校閲費など)、その他(印刷費、論文掲載費など)として使用する予定である。
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