2019 Fiscal Year Research-status Report
金属粉末射出成形品の高アスペクト比構造実現のための革新的プロセス構築
Project/Area Number |
18K04782
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
長田 稔子 首都大学東京, システムデザイン研究科, 特任助教 (90452812)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
品川 一成 九州大学, 工学研究院, 教授 (30215983)
小林 訓史 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (80326016)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 金属粉末射出成形 / 銅 / 炭素繊維 / 繊維配向 / 機械的特性 / 変形 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属粉末射出成形(MIM)は,粉末冶金の焼結技術に加え,形状付与の際に樹脂の射出成形を利用することにより,小型の複雑形状部品をネットシェイプで量産可能な技術である.本研究では,射出成形時のバインダの流動を利用することを考え,炭素の短繊維を添加したMIM原料を作製し,材料の流動方向に繊維を配向させることで機械的特性の向上を図った.さらに,配向した繊維により,脱脂焼結時の変形の抑制も可能であると考え,調査,検討を行った. 材料として,銅粉末および炭素短繊維と,ワックス系のバインダを使用した.銅粉末に対して炭素繊維を0,5,10 mass %添加し,バインダとの体積比を60:40として混練を行った.その後,ダンベル形状の金型を用いて射出成形を行った.成形体はヘキサン中で溶媒脱脂を行った後,窒素中もしくは5%水素添加窒素中で加熱脱脂を行い,連続してアルゴン雰囲気で焼結を行った.さらに,加熱脱脂および焼結工程のその場観察を行い,繊維添加による変形挙動の変化を調査した.初年度は高強度タイプの炭素繊維を使用したが,次年度は高弾性率タイプの炭素繊維を使用した. 成形体および焼結体の繊維配向をSEMにより観察し,樹脂の流動方向である試験片長手方向に繊維が配向していることを確認した.MIMの焼結体は通常3次元に等方収縮するが,繊維が試験片長手方向に配向していることにより,長手方向の収縮が小さく,幅および厚み方向の収縮が大きいことがわかった.脱脂焼結時のその場観察から,繊維を添加したことにより,試験部の変形が抑制されることを確認した.引張試験の結果,繊維添加により弾性率には若干増加が見られたが,強度はほとんど変わらず,伸びは小さくなる傾向が見られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に混練,成形により繊維が流動方向に配向することおよび,その過程において繊維長はほとんど変わらず,繊維の損傷はほとんど見られないことがわかった.高強度タイプの繊維を用いた試験片を用いて引張試験を行い,繊維添加により弾性率には若干増加が見られたが,強度はほとんど変わらず,伸びは小さくなる傾向が見られた.そこで,次に高弾性率タイプの炭素繊維を用いた実験を行った. 一方バインダ樹脂と金属粉末,および強化材との濡れ性については,混練状態,脱脂時の炭素などの残存や変形に大きく影響を及ぼす.強化材の分散性を向上させるバインダ樹脂成分の選択についても検討し,脱脂方法についても検討を行った. MIMの焼結体は通常3次元に等方収縮するが,繊維が試験片長手方向に配向していることにより,長手方向の収縮が小さく,幅および厚み方向の収縮が大きいことがわかった.脱脂焼結時のその場観察から,繊維を添加したことにより,試験部の変形が抑制されることを確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
高アスペクト比のヒートシンク形状の金型を新規作製し,材料が完全充填した健全な成形体を得られる条件を検討する.粉末,強化材,バインダの配合比を様々に変更させた材料により,流動状態の異なるサンプルを準備し,金型内の流動先端まで均質な状態で充填しているかを確認する.なお,成形体の強度が弱く,離型が困難な場合は,樹脂型を使用して,一体脱脂・焼結を行う等の対策をとる. MIM材の焼結時には,金属粉末の焼結による寸法収縮に加え,バインダの喪失による空隙を埋めるために収縮が生じ,一般にバインダを35 vol%程度添加した場合は,10 %程度の寸法収縮が起こる.この収縮により,強化材は母材と強固に接着できると考えているが,過剰な残留応力により,試料の変形などが生じる可能性もある.そこで,収縮時の強化材への残留応力評価手法を開発するとともに,強化材の特性発現のための材料設計,脱脂焼結条件等の最適条件を模索する. 作製したヒートシンク材の性能を評価する.本研究では,銅母材への炭素繊維の添加により,高アスペクト比構造による特性の向上を検討するが,今後,原料による特性向上の観点から,カーボンナノファイバーやナノチューブ,グラフェンなどへの展開も予定している.まずは通常のMIM工程での混練・分散を試みるが,難しい場合には,分散媒を使用した方法なども検討し,MIMのさらなる応用展開のための学理を追及したい.
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Causes of Carryover |
高アスペクト比金型を作製予定であったが,金額が合わず購入できなかったため,次年度使用額が生じた.次年度金型および消耗品費として使用する予定である.
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