2019 Fiscal Year Research-status Report
物質拡散による応力形成プロセスのその場観測技術の開発とそのメカニズムの解明
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18K04785
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
諸岡 聡 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 物質科学研究センター, 研究副主幹 (10534422)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮本 吾郎 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (60451621)
城 鮎美 (瀬ノ内鮎美) 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, 研究員(定常) (60707446)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 窒化 / 浸炭 / 応力 / X線応力測定 / 放射光白色X線回折測定 / その場測定 / オーステナイト系ステンレス鋼 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は、昨年度に引き続き、大型放射光施設で実施する回折実験のための最適な窒化処理条件の確立と、放射光単色・白色X線回折によるその場測定を用いた材料表面と内部のX線的弾性定数を決定することを目標とした。前者は限られたマシンタイムの中で最大限の成果を得るために必要な準備であり、後者は過去の文献値を用いることが多いが、実際は微量な化学組成の違いや、前加工の違いによる試料誤差が重畳するため、応力値を正確に求めるためには、同一試料の測定が必要である。 窒素拡散による応力形成プロセスを観測するための最適な窒化処理条件は、窒化物の析出しない窒化層を得ることであり、低温かつ低窒素濃度で長時間、加熱する必要があることがわかった。そこで、表面改質処理プロセス中放射光その場観測の条件は加熱温度1173K、窒素濃度100%、加熱時間2.5hに決定した。 放射光単色・白色X線回折によるその場測定は、大型放射光施設SPring-8の共用ビームラインBL08Wと量研機構専用ビームラインBL14B1で実施した。各ビームラインの試料ステージに小型引張試験機を設置して、引張試験と放射光回折測定を同時に行うことで、材料表面および内部における弾性領域の格子ひずみを同一試料から取得することができる。その結果、材料表面の窒化層と内部の基地層、それぞれのX線的弾性定数の決定に成功した。また、この結果の妥当性を確認するために、ラボX線応力測定装置を用いたその場測定により検討した結果、材料表面のみであるが、放射光X線回折によるその場測定の結果と良い傾向の一致を示した。これらの結果を基にして、2020年度は、表面改質処理プロセス中放射光その場観測を実施し、窒化処理による応力形成メカニズムの解明に取り組む。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、計画していた実験は概ね着手しており、2018年度に引き続き2019年度も順調にデータを取得することができている。特に、引張変形中の格子面間隔の変化から、窒化層と母層(オーステナイト)のX線的弾性定数の算出に成功し、化学組成や前加工等の試料誤差のない弾性定数が得られている。また、昨年度、問題点に挙げた「結晶粒の粗大化による回折線強度のばらつき」に関してであるが、揺動測定法を導入することで概ね改善できることが判明し、2年目の研究期間で問題点を改善できた点は非常に評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度はこれまで2年間蓄積したデータおよび条件を基に、「表面改質処理プロセス中放射光その場観測」を実施する。本実験は、大型放射光施設SPring-8のJAEA専用ビームラインBL22XUに本課題で購入した真空・ガス置換熱処理装置を設置して、表面改質処理プロセス中における表面のマクロおよびミクロ応力の経時変化を追跡する。現在、2020A期のマシンタイムに申請し、本課題が採択されているため、2020年度はスムーズに大型施設実験を行うことができる。この研究は研究代表者の諸岡と研究分担者の城研究員が担当する。さらに、その場測定の精度を確認するために、その場測定で作製された表面改質処理材を観察して、試作品と比較して良し悪しを確認する。これは研究分担者の宮本准教授が担当する。 2020年度の後半には、「表面改質処理プロセス中の応力形成メカニズム」について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の感染予防のため、研究代表者の出張取りやめにより次年度使用額が生じることとなった。次年度使用額は、2020年度の研究費と合わせて、高速解析用計算機の更新費用として計上する予定である。
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Research Products
(1 results)