2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K04796
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
栗田 典明 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20242901)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | チタニア / セリア / アルミナ / 溶融金属用水素センサー / 標準極 / 固体電解質 / 活物質 / ガルバニ電池 |
Outline of Annual Research Achievements |
アルミナを用いた高温溶融用金属用水素センサーにおいてガルバニック型水素センサーとして利用するには標準極内の水素活量を所定の状態に維持する必要が有る。従来は空気(+水蒸気)を標準極内に流すことで低水素活量状態を維持した。しかしながらこの方法では空気を流すための管が必要になり装置の小型化に支障があった。本研究は低水素活量状態を維持するための固体物質の探索を行い、小型で迅速に水素濃度を測定可能な水素センサーの実現を目標としている。そのために(1)金属/金属酸化物の利用、(2)金属酸化物の分解を利用、(3)酸素ストレージ効果のある物質を利用、と様々な検討を行ってきた。初年度では自動車の三元触媒にも利用されている酸素ストレージ効果の高いセリア系の酸化物を用いたセンサーより非常に良い結果を得た。しかしながら、セリアにネオジアなどの希土類酸化物をドープするため価格や資源的な問題もあった。 昨年度はさらに検討の巾を広げて試験を行った結果、チタニア系酸化物に可能性が有ることが判ってきた。具体的にはセリア系酸化物に比べて低水素活量状態を維持可能な時間やセンサー信号の安定性がチタニア系酸化物の方がより優れていた。研究によってチタニアも+3、+4価の価数の変化に伴い酸素の放出を行うことで水素センサーの標準極内を低水素活量状態に維持できることが明らかになってきた。さらに、特殊な処理を施したチタニアを用いれば標準極の集電体として用いている白金電極も不要となる可能性を示唆される結果も得た。チタニアは安価な化合物であり、この物質を用いた高温溶融金属用水素センサーが実用化されたならより広く利用されると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一昨年度は候補物質の考え方に3つあり効率的な探索に手間取ったが、その結果(3)の酸素ストレージ効果を利用したものが最も適していることが変わって来た。すなわち、他の(1)(2)は選択する酸化物の自由度や酸化物の分解速度の制御が困難であることなどが障害となりアルミナの標準極に用いるには不適当であることである。実験の結果(3)を利用した材料として希土類酸化物をドープしたセリア系酸化物が適しているという結果が得られた。しかしながら、希土類酸化物が高価であり、1回利用を前提とした消耗型水素センサーでは高価な材料の利用はやや難しかった。 昨年度は探索方針が決まったためより広く酸素ストレージ効果を持つ酸化物の探索を行った。具体的には自動車用三元触媒への利用が検討されているプラセオジウム系酸化物、チタニア系酸化物などである。それらの結果は既に述べたようにチタニア系酸化物を用いた水素センサーが最も高い信号精度や長時間の測定可能という結果が得られた。さらに特殊な処理を施したチタニアを用いれば標準極内の集電体として用いている白金電極も使用する必要が無いという結果も得られた。このことは安価なチタニア系酸化物の利用と共に当初の計画以上の結果となった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は当初の予定では昨年度実際のセンサー試作して現場にて測定する実験をする予定であったが諸事情により実現できなかった。今年度は今まで得られた知見に基づいて、チタニア系酸化物を利用した迅速測定可能な水素センサーの作製を行い現場にて測定を実施することを計画している。具体的には起電力の即応性、安定性、持続性である。一方でチタニアの標準極内部で用いる時の酸素放出に対するセンサー信号の持続性や即応性、安定性に影響を与える基礎物性を熱分析装置や熱重量分析装置などを用いて可能な限りセンサー内の環境を実現した上で明らかにしていくことを計画している。それらの結果から、高温溶融金属用水素センサーとして移用した時のセンサー寿命等を明らかにすることを計画している。
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