2019 Fiscal Year Research-status Report
過飽和溶液中の不均一界面の一方向移動よる結晶核発生の誘導
Project/Area Number |
18K04816
|
Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
五十嵐 幸一 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70315977)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 結晶核形成 / 不均一核化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は晶析操作における、核発生過程の新たなメカニズムについて検討するものである。過飽和溶液中からの結晶化では、結晶の起源となる核が発生し成長することで結晶化が進行する。申請者らは核発生の新たなメカニズムとして、溶質の一方向の拡散が結晶化のトリガーとなり得ることを報告してきた。また、最近では各種プラスチックを過飽和溶液中で一方向に動かすことにより核化を誘導できることを発見した。本現象は、静置条件では発生せず、プラスチックを動かすことが必須である。異物界面でおこる不均一核形成において、一方向への移動が核発生を誘導することは報告されておらず、本研究ではこの現象について詳しく明らかにする。 2018年度はこの現象を詳細に検討するための装置を開発し、プラスチックの移動速度と核発生速度との関係について検討してきた。しかし、プラスチック表面と溶質分子がどのような分子間相互作用をしているかについては以前明らかにすることができなかった。そこで、2019年度はプラスチック表面との相互作用に着目し、プラスチックとしてポリプロピレンをもちいて、プラスチックの多形と核発生の関係について検討した。ポリプロピレンにはα、β、γの3種類の結晶多形が知られている。プラスチック内部の結晶構造が異なれば、L-アラニンの核発生に及ぼす影響も異なるのではないかと考えた。本研究ではα型およびβ型のポリプロピレンを作製し、L-アラニンの結晶化に及ぼす影響について検討した。そして、α型に比べてβ型では核発生があまり促進されないことを発見した。同じポリプロピレンでも核発生に及ぼす影響が異なるのは大変興味深く、今後さらなる検討を進めていきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、装置作製に時間がかかる予定であったが、順調に作製が進んだため、早期に実験を開始することができた。プラスチックを自動で動かす装置や観察装置を駆使して、本課題を進めていきたいと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度はα型およびβ型のポリプロピレンを作製し、L-アラニンの結晶化に及ぼす影響について検討した。そして、α型に比べてβ型では核発生があまり促進されないことを発見した。同じポリプロピレンでも核発生に及ぼす影響が異なるのは大変興味深く、今後さらなる検討を進めていきたい。特に、興味があるのはプラスチックの多形が異なることと核発生誘導現象との因果関係である。プラスチック表面の性質が影響を及ぼしていると考えられるため、様々な測定手法により明らかにしていきたい。具体的には、疎水性の評価として接触角測定、表面に露出した官能基の違いを調べるためにFT-IR、ラマン分光法、表面の分子の配列の違いを調べるためにXRD測定、表面の微細な凹凸が関係しているか調べるために原子間力顕微鏡を用いた観察を行う。現在、これらの測定のために準備を行っている。
|