2020 Fiscal Year Annual Research Report
Induction of crystal nucleation by the unidirectional movement of the heterogeneous interface in a supersaturated solution
Project/Area Number |
18K04816
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
五十嵐 幸一 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (70315977)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 不均一核形成 / プラスチック / 多形 / L-alanin |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では有機化合物結晶(L-アラニン(L-Ala))の不均一核形成に及ぼすプラスチックの影響について検討した。過飽和溶液にプラスチックを浸漬して静置状態での核化を評価するのではなく、過飽和溶液中で一度だけプラスチック片を上下運動させ、それが核発生に及ぼす影響について検討を行った。 まず、様々なプラスチック(ポリプロピレン(PP)、高密度ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ナイロン66等)を用いて実験を行い、プラスチックの種類により核発生挙動に違いがあることを明らかにした。また、自動的にプラスチックを上下する装置および観察する装置を作製し、プラスチックの移動速度の影響についても検討した。1 mm/s~5 mm/sの範囲でプラスチックを動かし、2 mm/sの条件で最も核発生が誘導されることを見いだした。プラスチックによる不均一核発生促進にはプラスチック表面の構造が重要な役割を果たしていると推察できる。最終年度は、PPのみに着目した。PPは結晶性の構造を持ち、α、β、γの3種類の結晶多形を有することが知られている。そこで、α-PP、β-PPがL-Alaの結晶核発生に及ぼす影響について検討した。その結果、結晶核発生はα-PPにおいて顕著に促進されることがわかった。β-PPは不安定形であり、加熱によりα-PPに転移するが、転移したプラスチックはL-Alaの結晶核発生を促進した。さまざまなα/β比のPPを作製し、L-Alaの結晶核発生に及ぼす影響を調べた結果、核発生確率は完全にPPのα/β比に依存することがわかった。 本研究では、L-Alaの不均一核形成誘導に及ぼすプラスチックの移動に関する基礎的検討を行った。過飽和溶液が樹脂製の配管を移動する工程は日常的であるため、今回明らかになった知見が核発生過程の理解に資すると期待される。
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