2020 Fiscal Year Research-status Report
Preparations of nearly monodispersed nanoparticles and their ordered deposition film
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18K04817
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
森 康維 同志社大学, 理工学部, 教授 (60127149)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 化学工学 / ナノ材料 / 分離・分級 / 微粒子集積 / 表面・界面物性 / 貧溶媒添加法 / 薄膜作製プロセス / 電気泳動堆積法 |
Outline of Annual Research Achievements |
直径10 nm以下の半導体ナノ粒子は,量子ドット(QD)と呼ばれ,特異な光学特性を持つことが知られている。この光学特性を向上させるには粒子径分布の狭いQD試料が必要で,工業的な規模でこのような試料を得るために,貧溶媒添加法(SSP;Size Selective Precipitation)が適用できる。サイズの揃ったQD懸濁液から,高密度粒子配列膜を作製する方法として,本研究では電気泳動堆積(EPD)法を検討し,特に規則配列膜を作製する操作方法を見出す。 本年度は粒子の規則配列の作製方法の検討を重視し,200~300 nmの単分散球形シリカ粒子の規則配列について検討した。作製した粒子堆積薄膜表面の走査型電子顕微鏡(SEM)画像から,印加時間を大きくすると規則的な堆積構造の割合が増加した。ごく初期の堆積でシリカ粒子が基板に堆積する際,基板とシリカ粒子間で働く静電気的引力のため,シリカ粒子の横方向への移動が制限され,規則配列状態へ移行することは難しいためと推察される。したがって粒子が積層した基板から遠ざかった位置では,静電気相互作用が弱まり,シリカ粒子が安定な位置に容易に移動し,規則的に配列すると考えられる。 印加電圧が一定値の定電場と,電圧がON・OFFする矩形電場を用いて粒子を堆積したところ,矩形電場の方が定電場に比べて,規則的に配列した。定電場では一定の静電気引力でシリカ粒子が堆積するのに対し,矩形電場では電場が存在しない時間に,粒子がブラウン運動で周囲から等方的な力を受ける場所に移動し,より規則的な堆積構造をすると考えられる。しかし矩形電場の周波数を0.5~50 Hzに変化しても,その規則構造には差が見られなかった。 粒子堆積膜の透過率や反射率の光波長の依存性を,Bragg反射に従うと考え,規則堆積構造を推定したところ,粒子薄膜は六方最密充填構造であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
「大きさの揃ったナノ粒子の調製」に関する検討は,工業的にも利用できると思われるSSP法を硫化亜鉛QDに適用し,実験的に成功し,その作用機序についても一応の解釈に成功している。光学的応用が期待される半導体ナノ粒子であるInP/ZnSコア・シェルナノ粒子(InP/ZnS CS QD)や,銅・亜鉛・スズ・硫黄の4元素系半導体であるCZTS QDにSSP法を適用し,分級には成功したが,その最適化および理論的検討は,ドイツ連邦共和国のInstitute of Particle Technology, Friedrich-Alexander-University Erlangen-Nurnberg(FAU)およびUniversity Duisburg-Essen(UDE)との共同研究に待たねばならない。しかしながら,新型コロナウイルスの影響で実施できていない。 一方,「規則配列堆積膜の作製」に関する検討はEPD法を中心に検討し,その電場の種類,電場強度,粒子濃度,懸濁液の物性などの影響などを明らかにし,規則的配列構造の評価方法を確立してきた。その結果,この部分の課題に対する検討は初期の計画通りに進展していると考えられる。 したがって本研究課題としては,「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
粒子径分布の狭いQD試料を得るために立案していたドイツ連邦共和国のFAU太学およびUDE大学との共同研究は困難であると考えられるので,数100 nm径の粒子による規則的粒子堆積膜の作製に注力し,電気泳動堆積法とスピンコート法との比較検討を実施する。
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Causes of Carryover |
本年度検討する予定であったドイツ連邦共和国のFAU大学あるいはUDE大学所有の装置を用いたQD試料に関する共同研究が,新型コロナウイルスの影響で実施できず,また学会発表も困難となった。そこで,本研究課題のうちの「規則配列堆積膜の作製」の検討に重点を移し,共同研究に対して用意していた予算をそれに充てることにする。
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