2019 Fiscal Year Research-status Report
Reversible utilization of enzyme by grafting and refolding
Project/Area Number |
18K04821
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
大橋 秀伯 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 特任准教授 (00541179)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 固定化酵素 / タンパク質 / リフォールディング / 大気圧プラズマ / グラフト重合 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の固定化酵素は一旦失活してしまうと、その機能を回復させることは困難である。一方、酵素自体はタンパク質であり、可溶化剤によってポリペプチドの一次構造までほどくと、その後可溶化剤を取り除くことで、本来の三次元構造と機能を回復すること(リフォールディング)が可能である。一方で材料表面に方末端を固定化したグラフト鎖は可逆的な振舞いを示す。そこで、酵素をグラフト鎖として材料表面に固定化することで、可逆性を付与し、酵素が失活してその正しい三次元構造と機能を失っても、可溶化剤の添加/除去によって三次元構造を回復させることで、何度でも機能を回復させることのできる固定化酵素を実現する。 酵素(タンパク質)を末端で材料表面に繋がれたグラフト鎖とするためには、タンパク質側と材料表面側をそれぞれ修飾する必要がある。本研究においては、末端の「仮固定」の後に「本固定」を行うという段階を踏むことにより、確実に末端でグラフトする戦略を立てた。モデルタンパク質として、緑色蛍光タンパク質(GFP)を選び、そのC末端に仮固定/本固定用のペプチドとしてhistidineタグ及びcysteineを導入した(hc-GFP)。一方で、材料表面側の修飾として、ポリエチレン多孔質膜基材の表面に大気圧プラズマグラフト重合法により、ポリアクリル酸を前駆体として導入し、アミド化反応によって、仮固定用の官能基Ni-iminodiacetic acid(Ni-IDA)基と本固定用の官能基maleimide基を導入した。 hc-GFPの基材への固定を試みたところ、仮固定用のNi-IDAのみを持つ基材の場合には、溶出後にhc-GFPが失われていたのに対し、仮固定/本固定の両方を導入した基材の場合には、溶出後にhc-GFPが保持されていることを見出し、共有結合によるhc-GFPの基材への固定の成功を確認した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、モデル酵素(GFP)、基材(ポリエチレン多孔質膜)の両方に対し、仮固定用官能基(Ni-IDA)/本固定用官能基(maleimide)双方の導入が完了し、さらに修飾モデル酵素を修飾基材に固定化することに成功するなど、順調に進行している。同様に、材料表面の効率的な修飾のために、大気圧プラズマグラフト重合法の開発を並行して行っているが、特に当該年度は様々な機能性グラフトポリマー(正電荷・負電荷・生体適合ポリマー等々)をプラスチック以外の材料表面に固定化する手法の開発も手掛け、例えば金属材料としてアルミニウム表面へのグラフトポリマーの固定に成功している。大気圧プラズマを用いたグラフト手法は、従来の低圧プラズマを用いる手法に比べて、真空チャンバーフリー、パターニング可能、などの多くの利点を有しており、今後多方面への応用が見込まれる。この結果を以って、順調に進展していると考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までに、hc-GFPへの基材への固定が確認されたことから、今後の推進方針としては、固定したhc-GFPを一旦失活させ、その上で、基材上で活性再生が行えるかの確認を行う。これにより、活性再生を可能とする固定化酵素のコンセプトを証明するステップを進めていく予定としている。また、ポリアクリル酸グラフトポリマーへの仮固定用/本固定用の官能基は導入を定性的に確認しているものの、薄膜上への微小量の導入であるため、その定量的な確認は未到達である。タンパク質の末端による固定化の効率化を行うために、バルクのポリアクリル酸への各官能基の固定を行い、定量分析を行うことで、基材の最適化を行い、活性回復率の高い再生可能固定化酵素の実現を目指す。大気圧プラズマグラフト手法に関しても、前年度に引き続き、多様な材料表面への多様な機能性グラフトポリマー修飾を可能とする手法の開発を進めていく。
|
Causes of Carryover |
他の研究費による研究遂行が可能であったため、次年度使用額が生じた。生じた残額に関しては、本年度に遂行していく予定としている。特に、再生可能な固定化酵素の開発に加え、大気圧プラズマグラフト重合法に関しても予算を振り分け、検討を進めていく予定としている。
|
Research Products
(8 results)