2019 Fiscal Year Research-status Report
ガス環境TEMその場観察法は真に材料とガスとの反応を観察しているのか?
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18K04824
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
徳永 智春 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (90467332)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ガス環境TEM / 電子線照射 / イオン / プラズマ環境 / 窒化 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は,透過電子顕微鏡内部のガス環境中にバイアスを印加することが可能な自作の電極ホルダーを挿入し,電子線が照射されているアルゴンや窒素雰囲気中にイオンが発生していることを明らかにした. 本年度は,電子線が照射されているガス環境中に形成されたイオン空間が観察対象の材料に与える影響を調査した.初年度に作成した電圧印加ホルダーの先端に,試料をセットすることが可能な導電性ステージを作製した.ステージ上にイオンミリング法により作製されたSUS304の薄膜試料をセットし,ガス環境透過電子顕微鏡内部の窒素ガス雰囲気に挿入した.昨年度のイオン環境測定結果から,最も多くのイオンが発生すると考えられた,2000Paを雰囲気圧力として選択した.SUS薄膜の同一箇所のTEM観察を行うと共に,観察前後のEELスペクトル,特に窒素を含んだ領域の元素分析を行った.ただしEELスペクトルは高真空中において実施しており,雰囲気に残留した窒素からのシグナルを含んではいない. 観察前後においてTEM像中のコントラストの変化は見られなかった.しかし,観察前後の試料から得られたEELスペクトルを比較すると,電子線を継続的に照射した試料から,窒素のシグナルが検出され,試料表面が窒化していることが示唆された.窒素雰囲気中にSUSを保持するだけでは窒化しないことから,電子線が照射された窒素ガス環境中に発生した反応性の高いイオンにより,SUS表面が窒化されたことが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究対象となる事象が電子線照射によるイオン化であったため,現象の発生がおおむね予期で来ていたことと,それらを明らかにする手法,特に必要となる真空機器を自分で設計することができたことで,容易に進められたと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
電子線照射されたガス環境中に発生するイオンをコントロールするためには,電極によるイオンの除去と集中を実施する必要がある.既に,電極ホルダーは開発済みであり,イオンを電流として検出することにも成功していることから,ホルダー先端の電極をデザインし,それによるイオンコントロール(試料周辺からの除去,及び集中)の実証を行う. また,当初実験計画には含まれていなかったが,導電性ステージに高周波電圧を印加することで,プラズマCVD環境中における材料創成の再現にチャレンジし,ガス環境電子顕微鏡法を試料創成及び分析法の一つとしての利用を目指す.
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