2019 Fiscal Year Research-status Report
高電流密度運転を指向した燃料電池用カーボンフリー触媒層の構造設計・開発
Project/Area Number |
18K04841
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Research Institution | Kanagawa Institute of Industrial Sclence and Technology |
Principal Investigator |
黒木 秀記 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 高効率燃料電池開発グループ, サブリーダー (70716597)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 燃料電池 / カーボンフリー / 触媒層 / カソード / マイクロポーラス層 / 水移動 / 物質移動抵抗 / 高電流密度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、固体高分子形燃料電池(PEFC)のためのカーボンフリーカソード触媒層における高速物質移動構造の設計・開発を目的としている。カソード内部では、触媒反応、プロトン・電子の伝導、酸素ガスの拡散など、複雑な現象が起こり、電池性能を決定している。特に、高出力化に必要な高電流密度領域での運転においては生成水の影響が顕著となるため、酸素の物質移動抵抗の低減には、電極(触媒層+拡散層)内部での水の移動や凝縮(液水形成)を考慮した構造設計が必要である。 前年度は、カーボンフリーカソード触媒層から水を効率よく移動・排出させるために、触媒層とガス拡散層の間に設置するマイクロポーラス層(MPL)の細孔構造および親疎水性を制御し、発電性能との関係性を整理した。2019年度は発電性能の湿度依存性やMPLの厚みの影響を調査した。MPLを薄くすることで、物質移動抵抗に起因する性能低下が高電流密度側にシフトすることが確認された。このことから、カーボンフリー触媒層と組み合わせるMPLは、細孔構造、新疎水性、厚みといった構造を適切に設計することが重要であることが示唆された。さらに、本課題が提案するラテックス粒子を触媒層細孔のテンプレートとする手法、即ち触媒層形成後に混合したラテックス粒子を溶出させることで、カーボンフリー触媒層の細孔構造を制御する新規手法の条件検討を行った。ここでは、構造制御のために、粒径の異なるラテックス粒子を用いた。得られた触媒層の細孔構造や厚みを詳細に評価するために、FIB-SEMによるMEA断面観察を進めた。この様に、カーボンフリー触媒層の系統的な構造制御を行う手法を構築し、拡散層とカーボンフリー触媒層を含めた電極全体での物質移動現象の理解を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018-2019年度は、カソード電極におけるカーボンフリー触媒層およびガス拡散層構造が高電流密度領域での発電性能(物質移動特性)に与える影響の調査を目的としている。今年度までにカーボンフリー触媒層と組み合わせるガス拡散層構造と運転条件(湿度)が発電性能に及ぼす影響を整理した。さらに、新規手法を用いたカーボンフリー触媒層の構造制御を検討し、電極全体での物質移動現象の理解を進めていることから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
テンプレート粒子を用いたカーボンフリー触媒層の細孔構造制御をさらに進め、触媒層の構造解析及びそれらの構造が発電性能に与える影響を明確にする。この際、電極内部での液水形成や物質移動現象を理解するために、カソード電極へ供給する酸素ガスの分圧や湿度を変化させた発電試験や電気化学的解析を行う。さらに、これまでに得られた結果と合わせて、カソード電極全体での物質移動現象を議論する。以上の知見を触媒層・拡散層開発にフィードバックさせ、PEFCの高電流密度運転を可能とする電極構造の設計指針獲得・構築を目指す。
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