2019 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of key regulators of heterosis in allopolyploid microalgae
Project/Area Number |
18K04847
|
Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
前田 義昌 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30711155)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 異質倍数体 / 雑種強勢 / 微細藻類 / 珪藻 / トランスクリプトミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
微細藻類の一種である珪藻のFistulifera solarisは、2種類のゲノムを併せ持つ異質倍数体(雑種)である。その影響によりF. solarisは微細藻類の中でも特に脂質を高蓄積する形質を有し、バイオ燃料原料の生産ホストとして注目されている。そこで本研究では、F. solarisが持つ2種類のゲノムの構造や発現挙動といった特徴を解析することにより、雑種微細藻類の雑種強勢に関与するキーレギュレーターを探索することを目的とした。2019年度では、前年度にナノポアシークエンサーMinIONを用いて取得したF. solarisゲノムのリシークエンス結果の精査によるゲノム構造の決定と、近縁種で異質倍数体ではないF. pelliculosaのゲノム情報との比較解析を行った。MinIONにより得られたF. solarisゲノムの全リードの総塩基数は約4.8 Gbpとなり、ドラフトゲノムの約97倍の塩基情報が得られた。アセンブリングの結果、62個のcontigが得られ、総塩基数は約51.7 Mbpとなった。得られた62個のcontigのうち核ゲノムに相当するcontigの数は45個であり、それぞれ相同性の高い22対44本の染色体対に収束した。染色体の全88カ所の末端のうち、テロメアが82カ所で確認された。また8本の染色体対において、GC含量の分布に基づきセントロメアが予測できた。以上のことから、F. solarisの異質倍数体ゲノムの構造を決定できたと結論付けた。このゲノム構造の中で、脂肪酸合成経路の主要酵素の遺伝子がタンデムリピート構造をとることを見出した。このリピート構造はF. pelliculosaゲノムでは見出されておらず、F. solarisの異質倍数体ゲノムに特有の構造であることが示唆され、F. solarisの脂質合成経路の強化に寄与していると考えられた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度では、長鎖DNAを解析可能なナノポアシークエンサーMinIONによるリシークエンス結果を精査し、F. solarisの異質倍数体ゲノム構造を決定した。その結果、既に実施されていたパイロシークエンシングでのドラフトゲノム解析では見出されなかった、脂質合成酵素遺伝子のタンデムリピート構造を見出すに至った。この異質倍数体ゲノムに特徴的な構造は、脂質を高蓄積するというF. solarisの優れた形質の鍵となる構造の一つであると考えらえられ、遺伝子発現解析を含めた更なる解析が必要である。このように、雑種強勢の鍵となる遺伝子の候補が得られたことから、本研究は概ね順調に進行していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は、前年度に取得した雑種珪藻F. solaris、および近縁種珪藻F. pelliculosaにおいて、雑種強勢の鍵となる遺伝子候補の発現挙動の解析を進める。また、遺伝子組み換えによる人為的な発現量の調節を行い、鍵となる遺伝子の機能がF. solarisの形質に与える影響の検証を試みる。
|