2018 Fiscal Year Research-status Report
定量プロテオミクスによる代謝制御機構の解明と有用物質生産酵母構築への応用
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18K04851
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 史生 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50462734)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 定量プロテオーム解析 / 出芽酵母 / 代謝制御機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに行った検討から、ワイン酵母株は実験室酵母株(BY4739)と比較してエタノール生産能力が弱く、TCAサイクルが活性化していた。そこで2倍体実用酵母株6種と実験室株を同一条件で培養し、対数増殖期および定常期の菌体からタンパク質を抽出した。トリプシン消化したペプチドサンプルをLC-MS分析に供し、中心代謝・タンパク質ホメオスタシス・細胞骨格に関する281個のタンパク質を定量するMRMメソッドを用い、ターゲットプロテオーム解析を行ったところ、196個の定量に成功した。データの比較解析から、発現量のバラつきが大きいタンパク質群を調べると、「細胞骨格」などではなく「ピルビン酸代謝プロセス」など、代謝に関わる機能をもつことがわかった。次に各実用酵母化株で増加、減少している酵素タンパクを同定した。特に、中心代謝のタンパク質発現では、実験室酵母BY4947は解糖系で全体的に発現量が大きくなった。ワイン酵母ではTCA回路のタンパク質発現量が増加した。清酒酵母とワイン酵母の発酵能とタンパク質発現プロファイルを比較すると、ワイン酵母は酸化的リン酸化が活性し、TCA回路の発現量増加はワインの品質に影響を与える有機酸の合成と関連があると考えられた。 異なる代謝状態の酵素発現プロファイル比較から、代謝フラックス変化に寄与する反応を直接的に推定する方法論、および酵素発現量の実測値を酵素反応速度式に直接代入し、速度論モデルを用いた代謝シミュレーションから制御機構を解明する方法論の開拓を試みた。今年度は代謝シミュレーションを行うために必要な酵母代謝速度論モデルを構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、2倍体実用酵母株6種を実験室株から酵素発現量プロファイルデータを取得し実用酵母化株で増加、減少している酵素タンパクを同定できた。また、代謝シミュレーションを行うために必要な酵母代謝速度論モデルを構築できた。以上の結果から、(2)おおむね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
ペントースリン酸経路の代謝フラックス制御はグルコース 6-リン酸脱水素酵素 (G6PDH)と6-ホスホグルコン酸脱水素酵素 (6PGDH)が担うことが知られている。これまでの定量プロテオーム解析結果から、酵素発現量だけでは代謝制御機構が説明できないことが明らかとなった。そこで、酵母代謝速度論モデルを用いた代謝シミュレーションを行い、ペントースリン酸経路などの代謝制御機構の解明を行う。また、ATP供給能力を改良した酵母株を作成し、その効果を確認する。
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