2020 Fiscal Year Annual Research Report
Quantitative proteomics for metabolic engieering of Saccharomyces cerevisiae
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18K04851
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
松田 史生 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (50462734)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 出芽酵母 / 代謝フラックス解析 / 代謝熱 / 代謝工学 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和1年度に行ったワイン酵母株、日本酒酵母株、パン酵母株および実験室酵母株の13C代謝フラックス解析によるTCAサイクル制御機構の解析の結果、ワイン酵母株、日本酒酵母株、パン酵母株ではTCAサイクルの代謝フラックスレベルが向上していた。さらに、ATPの収支を推定したところ、日本酒酵母株、パン酵母株ではATPの消費量が増加しており、エタノール比生産速度の向上に寄与する可能性が示唆された。今年度は、これらの知見をもとにATPの消費量と発酵能力との関連を解析した。ATP再生速度と比増殖速度の関係は式r_ATP=Y_xATP μ+m_ATPで表され、r_ATP はATP再生速度 (mmol/gDCW/h) 、Y_xATP は理論最大ATP収率 (mmol/gDCW) 、m_ATP は細胞維持エネルギー定数 (mmol/gDCW/h) である。そこで、13C-MFA結果のフラックス値から算出したATP再生速度と比増殖速度のプロットを作製したところ、m_ATPが負の値となる結果となった。これは、野生株と比較してm_ATPが実用株では大きいことを示唆する。そこで、13C-MFA結果から得た細胞内外の物質収支から、代謝熱の生成量を見積もったところ、野生株に比べて実用株では、2-3倍ほど高い結果となった。さらに、スポットアッセイにより、低温時の増殖能を比較したところ、実験室酵母株にくらべ、とくに日本酒酵母株、パン酵母株で低温ストレスに対する耐性が観察された。これらの知見は、実用酵母株ではATPの消費量が多く、それが電子伝達鎖および基質レベルのリン酸化によるATP供給の増加につながり、さらに、代謝熱の生成による低温耐性およびエタノール生産速度の向上に寄与すると考えられた。これらの知見をもとに、解糖系代謝速度を向上可能な代謝設計を行い、実際に代謝工学株を構築したところ解糖系フラックスが5-10%程度向上していた。また、ブタノール等の高生産株の代謝デザインを行った。
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