2019 Fiscal Year Research-status Report
異種ドメイン連結型バイオコンジュゲーションによる細胞表層機能材料の開発
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18K04855
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
若林 里衣 九州大学, 工学研究院, 助教 (60595148)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ペプチド / 自己組織化 / 温度 / 共集合 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、自己選別的な組織化によりドメイン構造を形成する両親媒性ペプチド (PA) ペアを用いることで、複数種類の生体分子を一つの構造体上に局在集積させる「集積化バイオコンジュゲーション技術」の確立を目指している。自己組織化由来の動的性質とドメイン構造という生体膜構造との類似性を活用することで、細胞表層で機能する材料を開発することを最終目標とした。ドメイン構造は、PAの疎水部に非相溶性の置換基を導入することでの達成を試みた。また、複数種類の生体分子の集積化には、互いに直交した反応ペアを用いることで、互いに影響を与えることなく集積化が可能になると考えた。 前年度までに、互いに非相溶な疎水部を持つ二種類のPAを用い、PAのドメイン構造形成に関して、主に共焦点レーザー顕微鏡を用いた直接観察により評価を行った。その結果、疎水部の違いにより、自己組織体の成長温度が異なることが示された。さらに二種類のPAを混合した際に、温度条件に応じて形成されるドメイン構造に変化が生じることを見出した。2019年度はまず、疎水部の異なるPAの自己組織化のメカニズムに関して、各種分光学的手法による解析を試みた。結果、ペプチド間の水素結合やペプチド側鎖の芳香族性置換基間のスタッキング相互作用の温度による変化を検出することに成功した。さらに疎水部の長さやペプチド側鎖を変化させ、自己組織化がどのように変化するかの検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに、本研究で用いるPAの基本設計として、疎水部にハイドロカーボン系アルキル基とフルオロカーボン系アルキル基を有する二種類のPAが有効であることが示されていたため、2019年度も引き続きこれらのPAペアを用いた検討を行った。これら二種類のPAは、自己組織化(構造体の成長)が生じる温度が異なることも示唆されていたため、今年度はそのメカニズム検証を主に行った。 具体的には、自己組織化におけるペプチド間相互作用の影響を調べるため、高温条件で溶解させた各PA水溶液を37°Cまで降温後のFT-IRおよび蛍光スペクトル測定を経時的に行った。結果、構造体の成長には主に水素結合が寄与していることが示された。さらに疎水部の長さやペプチド側鎖を変化させたPAを用いた検証の結果、自己組織化の過程においてペプチド側鎖の芳香族性置換基間のスタッキング相互作用の増強や組み換えが生じることも示唆された。以上の結果は、共焦点レーザー顕微鏡による直接観察によっても支持された。 生体分子の局在集積の足場となるPAドメイン構造の形成メカニズムは、本研究の基盤となる重要な点であることから、重点的に検討を行った。次年度以降に行う生体分子の集積に向けた材料の基本設計が得られたと考えられるため、おおむね順調に進行していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
まず2019年度までに得られた知見をもとに、最適なPAペアを用い、PAドメイン構造の形成メカニズムの解明と形成条件の最適化を行う。この際、生体分子の集積化に向け、各PAに直交性の反応基ペアを導入したものに関しても合成し、検討に用いる。生体分子の集積には、具体的には、共有結合性のHuisgen環化付加反応、あるいは非共有結合性のavidin-biotin相互作用の利用を予定している。生体分子には、まず蛍光顕微鏡で評価が可能な蛍光タンパク質(EGFP、dsRed等)を用いる。これにより概念実証が可能となった後、細胞表層機能材料の創製へ向け、細胞接着性タンパク質等の生体分子の集積化を試みる予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究は、PA材料作製に係る消耗品の購入や分析装置使用料、研究成果発表の旅費等、予算の範囲内で計画に沿って実行することができた。生体分子の作製および細胞実験を行わなかったため、それに関連した消耗品の支出が不要となった。次年度以降、材料の作製や分析に有効活用するため、次年度使用額とした。研究費は、主にPA合成、タンパク質合成用の材料費、細胞実験用試薬・消耗品、分析用の各種試薬・消耗品、研究成果発表のための旅費等に充てる。
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Research Products
(18 results)