2019 Fiscal Year Research-status Report
免疫賦活作用を有する乳酸菌由来メンブランベシクルの産生の制御とその機能性の設計
Project/Area Number |
18K04857
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
山崎 思乃 関西大学, 化学生命工学部, 准教授 (50602182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片倉 啓雄 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50263207)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳酸菌 / 膜小胞 / IgA / アジュバント |
Outline of Annual Research Achievements |
細菌の多くはタンパク質や核酸などを含むメンブランベシクル(MV)と呼ばれる膜小胞を産生し、宿主に多様な生理活性をもたらす。これまでにプロバイオティクスである乳酸菌Lactobacillus sakei NBRC 1589が、宿主の免疫賦活作用、特に、粘膜免疫系で重要なIgA産生促進作用をもたらすことを見出してきた。本研究では、安全性の高い本菌株が産生するMVをインフルエンザ等の経鼻ワクチンのアジュバント(免疫賦活剤)に応用することを目的とし、MV の形成様式に基づき、細胞壁のゆがみを培養条件や物理的ストレスにより人為的に誘発することで、MVを効率良く産生させる条件を検討する。本年度は、MVの免疫賦活作用の解明を目指し、免疫機構の理解が進んでいるマウスパイエル板を用い、MVがIgA産生を促進するメカニズムと宿主へのエントリーの様式を解析した。まず、MVが細胞レベルでIgA産生を促進するメカニズムとして、MVが樹状細胞のTLR2を刺激して、B細胞のIgAクラススイッチ組換えを誘導する因子の産生を促進すること、また、MVが腸管上皮細胞を介してパイエル板の樹状細胞が局在する領域に取り込まれることを明らかにした。次に、高い免疫賦活作用をもつMVの効率的な産生を目指し、本菌株の培養条件、特に培養温度がMV産生量に及ぼす影響について検討した。その結果、至適温度よりも高い温度域においてMVの産生量が増加するとともに、産生されたMVの免疫賦活作用も増大することを見出した。以上より、MVの産生量のみならず、免疫賦活作用に表される「質」についても考慮すべきことが明かとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メンブランベシクル(MV)の機能性、特に免疫賦活作用を設計するためには、MVが免疫賦活をもたらすメカニズムの理解が必須である。本年度は、乳酸菌Lactobacillus sakei NBRC 15893をモデル菌株とし、産生されたMVがパイエル板細胞に作用するメカニズムの詳細を細胞レベルで明らかにした。さらに、免疫賦活作用の設計として、培養温度を制御因子とすることで、MVの免疫賦活作用を変化させることができることを明らかにすることができた。以上より、研究は予定通りに進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、MVに含まれる免疫賦活をもたらす成分を同定し、MVの「質」を評価するとともに、インフルエンザ経鼻アジュバントしてのMVの有効性を検証する。免疫賦活をもたらす成分は、候補物質である膜タンパク質やリポテイコ酸をそれぞれ所定の方法で精製し、免疫賦活作用を評価することで同定する。さらに、MVの「質」の向上を目的とし、MVに含まれる当該成分の量を評価指標とし、「質」の高いMVの産生条件を検討する。また、MVのワクチンアジュバントとしての有効性は、インフルエンザ不活化ワクチンとMVとを混合してマウスに経鼻投与し、鼻腔粘膜上に抗原特異的IgAが誘導されるかどうかで評価する。
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Research Products
(6 results)