Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では, DANS分子以外にもナノチューブ内部で二次の非線形光学特性を発現する可能性のある分子について昨年度と同様の密度汎関数法計算を行った. この一つの例としてトリヨードベンゼンを考えた. ここで, 直径が 1.0~1.2 nm のアームチェアナノチューブをホストとして複数のトリヨードベンゼンを内包したホストーゲスト材料の構造最適化を行った。トリヨードベンゼンとして3種類の異性体を考えた. 密度汎関数法計算の結果, 直径が 1.0~1.1 nm のチューブ内部では, いずれの異性体においても直線型に配列することがわかった. 一方, 直径が 1.2 nm のチューブでは, 1,2,4-トリヨードベンゼン (124BzI) は積層型に配列する結果となった. ここで, それぞれの最適化構造において二次の非線形光学特性を表す指標である超分極率を算出したところ, 直径 1.1 nm のチューブ内部に124BzIが直線型配列を有するホストーゲスト構造体において最も顕著な超分極率を示し, 積層型配列の超分極率よりも大きくなった. この直線型配列では, 124BzI分子間にハロゲンーハロゲン相互作用が働くため, 二次の非線形光学特性を発現するには, ハロゲンーハロゲン相互作用が重要な役割を果たすことが明らかとなった. 次の試みとして, チューブ内部の化学反応を制御し, 選択的にパイ共役系分子が作成できないかを試みた. この試みに対する知見を得るために, フェニルアセチレンとフェニルアジドとの1,3-双極子付加環化反応について解析を行った. その結果, チューブ直径を制御することにより, 1,3-双極子付加環化反応の選択性が向上することが明らかとなった. この知見は, チューブを用いて所望のパイ共役分子が生成することを示している.
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