2019 Fiscal Year Research-status Report
複合量子ドット光触媒の合成とプロトンおよび二酸化炭素還元反応への応用
Project/Area Number |
18K04869
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
渡辺 洋人 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 副主任研究員 (00500901)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
染川 正一 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 事業化支援本部技術開発支援部先端材料開発セクター, 主任研究員 (20520216)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光触媒 / 量子ドット / 多孔質体 / 複合材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、1 nm前後の粒径を有する量子ドット光触媒に着目して研究を行った。量子ドットの場合、粒径が極小であるために励起電子-正孔対の空間的電荷分離が困難である点が活性低下の一因として懸念されている。本研究では、異なる量子ドットを複合化させ、励起電子と正孔を異種粒子上に電荷分離することで、高機能性を示す複合量子ドット光触媒の開発を行った。 本年度はまず、酸化触媒に選定したWO3量子ドットの性質を明らかにするためにXAFSの測定を行った。WO3の場合、量子ドット化により活性が低下するTiO2の場合とは異なり、量子ドット化によるXAFSスペクトルの変化が見られなかった。このことはWO3量子ドットが、プロトンや酸素の光還元反応に対して有効な光触媒として機能することと相関すると考えられる。 次に、Bi2O3-WO3複合量子ドットを合成し評価を行った。合成した複合触媒に対し、エタノール存在下、空気中で紫外線照射を行ったところ、WO3量子ドットで観測されるフォトクロミズムが消失することが明らかになった。これは、WO3量子ドットに生成した励起電子が速やかにBi2O3量子ドットに移動していることを示しており、理想的な複合体が生成したことを示している。 この複合体およびBi2O3量子ドットのXAFSスペクトルを測定したところ、Bi2O3量子ドットでは、バルク体のスペクトルからのピークシフトが観測されたが、複合体ではバルクと同様のスペクトルとなった。この結果は複合体の形成に成功していることを示すとともに、複合体においては単独のBi2O3量子ドットと異なる性質の粒子がWO3量子ドット上に生成したことを示唆している。以上のように、本年度は、Bi2O3-WO3複合量子ドットの合成に成功したとともに、XAFSスペクトルを用いた解析が、複合状態の評価に有効であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度までに、TiO2-WO3、およびBi2O3-WO3複合量子ドットを合成し評価を行った。多孔質シリカの1 nmの細孔を合成場として用いることで、前駆体水溶液に含浸、洗浄、乾燥、焼成という、極めて簡便な方法を用いた複合量子ドットの合成が可能になった。複合体形成の評価においては、当初から予定していたWO3量子ドットにおけるフォトクロミズム挙動の変化を指針とする方法に加え、XAFSスペクトルを用いた解析が複合化の合否のみではなく、活性を判断する手段として有効であることを見出した。また、触媒の評価系として、プロトンと酸素の光還元反応の評価、VOCの光触媒による分解反応の評価、などの評価系を構築した。以上のように、本年度までに、基本的な合成方法と評価方法がほぼ確立できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに確立した基本的な合成方法と評価方法を基に、次年度は複合体の光触媒機能と反応機構の解明を行っていく。具体的な複合材料として、Bi2O3-WO3およびIn2O3-WO3複合量子ドットを主軸に研究を進める。それぞれの酸化物半導体のバンドアラインメントや金属イオン種の酸化還元準位、表面の特異性等を考慮すると、Bi2O3-WO3とIn2O3-WO3では、光触媒反応中に異なる機構で反応が進行することが予測できる。この点に着目して、次年度は複合化による機能性の付与が酸化物の種類によってどのように変化するのかを見極め、高活性な触媒合成を行っていく
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Causes of Carryover |
紫外線励起光源として、現在保有する光源で十分な評価が可能であったため、導入を検討していた新規光源を取りやめた。その分の予算を次年度の分光測定、および光触媒よう反応容器などにかかる費用として使用する予定である。
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