2021 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of study on pressure effects of spin nano-systems
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18K04875
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
光田 暁弘 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20334708)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | スピントロニクス / 圧力効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度、Pt/CoFeB二層膜において、圧力セル内で、強磁性共鳴によってスピンポンピングand/or温度勾配による動的スピン注入を引き起こし、逆スピンホール効果の信号が圧力によって増強されることを見いだした。本年度はこの観測結果の詳細な解析を行った。ホモダイン検波によって分離された直流電圧信号は、磁場に対するローレンツ関数の対称成分と反対称成分に分離され、前者において逆スピンホール効果、後者において電流磁気効果が支配的である。実験で得られた信号は前者が支配的であった。この前者の対称成分は圧力とともに増大しており、逆スピンホール効果が0~0.8GPaの圧力領域で8%増大し、それ以上で飽和していることが明らかになった。一方、後者の反対称成分は圧力に対してほぼ一定を保つ。このことは、圧力印加による素子の収縮に伴う交流磁場の変化や素子自体の抵抗変化など、逆スピンホール効果を評価する上で懸念される影響が無視できることを示唆している。 逆スピンホール効果の圧力増強の原因としては、(1)Ptのスピンホール角の増強、(2)PtとCoFeB界面のミキシングコンダクタンスの増強の2つが考えられる。上記の実験だけではこの原因について分離することが容易ではないため、この点を解明する一手段としてPtのバンド計算を行い、圧力下における内因性スピンホール伝導度を調べた。現時点で圧力とともにスピンホール伝導度が減少する傾向が出ている。よって、ミキシングコンダクタンスの増強の可能性が極めて高いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
圧力セルの中でスピントロニクス素子のスピン現象を引き起こし、観測することは想定以上に困難を伴うものであった。そのため成果が出るのに時間がかかってしまったが、投稿論文が出版された。また、非常に精力的な学生が、Pt/CoFeBの二層膜、Pt/Ag/Biの三層膜の作製、ホモダイン検波による強磁性共鳴と逆スピン信号の検出、Ptのバンド計算、高圧下磁化測定を精力的に進めてくれており、これまでの遅れを挽回している。
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Strategy for Future Research Activity |
Ptのバンド計算についてより詳細に行うことにより、逆スピンホール効果増強の原因について調べるとともに、より高い圧力下においても強磁性共鳴による動的スピン注入およびそれに付随するスピン現象の観測を実現することを目指す。また、スピントロニクス素子の圧力下磁化測定にも引き続き挑戦していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍において研究の進み具合が遅れ気味であったこと、本研究を精力的に推進してくれている学生が次年度4月から博士課程に進学してこの研究を継続することになったことから、本研究に必要な圧力セル部品の購入費用と、学生の旅費に充てる。
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Research Products
(2 results)