2018 Fiscal Year Research-status Report
ナノ結晶水分散製剤の長期的な水分散安定性を確保できる方法論の解明と技術開発
Project/Area Number |
18K04887
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場 耕一 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00436172)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ材料科学 / 薬剤ナノ結晶 / 製剤安定性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究のテーマは、ナノ結晶水分散製剤の長期的な水分散安定性を確保できる方法論の解明と技術開発であり、平成30年度の研究目標は、水中でのナノ結晶成長の原因解明(分析と分類)であった。ある種類のステロイド系難水溶性薬剤は脂溶性の物質でナノ結晶表面をコーティングが可能で、それによりナノ結晶が水雰囲気から物理的に隔離され、水中での結晶成長が抑制されたと推測できる。特にこのナノ結晶の水中での結晶成長抑制は重要であるが、難水溶性薬剤の溶解度、分子構造、結晶構造、粒子サイズ・形態等の物性が強く関連していると推測される。その中で特に重要な物性は、対象化合物への水への溶解性であることはおよそ妥当な見解である。それに関連し、対象化合物分子の水への溶解性は、対象化合物分子の置換基や、結晶を形作る上で生じる分子間相互作用に強く依存するように思える。ただ普遍性あるこれらの同定と分類には十分には至っていない。また一方で分子の種類に寄らず、そのナノ結晶製剤の結晶成長を抑制できる技術は重要である。様々な種類のポリマーや分散安定剤の添加が有効に思えたが、あらゆる種類のナノ結晶製剤に万能な結晶成長抑制剤の発見には至っていない。対象化合物分子が有する本質的物理的性質(溶解度、結晶構造等)と分散安定剤等添加物の組み合わせの最適解があるように思えるが、現時点、双方を結びつけるような明快な答えを見出すには至ってない。これらのことを視野に入れ、平成31年度に研究を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成30年度の研究目標は、水中でのナノ結晶成長の原因解明(分析と分類)であった。特にナノ結晶の水中での結晶成長抑制は重要であるが、難水溶性薬剤の溶解度、分子構造、結晶構造、粒子サイズ・形態等の物性が強く関連していると推測される。その中で特に重要な物性は、対象化合物への水への溶解性であることはおよそ妥当な見解でり、また水への溶解性は対象化合物分子の置換基や、結晶を形作る上で生じる分子間相互作用に強く依存するように思える。しかしながら、水中でのナノ結晶成長の原因解明(分析と分類)については、まだ十分には至っていない。平成31年度に研究を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度: 結晶成長抑制剤(Crystal growth inhibitor)の探索と選定 ナノ結晶の水中での長期的な結晶成長を抑制するためには、これまでの申請者の研究成果および国内外の研究報告に基づくと、ナノ結晶表面を首尾よく被覆できる基剤を使用することが有望な方法論である。ただどのような基剤がナノ結晶水分散製剤の被覆に適しているかは十分に整理されておらず不明な点が多い。そこで様々な種類の被膜基剤をスクリーニング的にトライし、結晶成長抑制の観点から、様々な薬剤と様々な被覆基剤との有効な関係性を明らかにし分類・整理することで、水中でのナノ結晶成長を抑制できる実験事実に基づいた方法を明らかにし、知識化し技術化に結び付ける。達成目標として室温において3年間結晶成長が起こらないナノ結晶水分散製剤の開発を行う。実質、本長期間に相当する過酷試験を実施することで評価する予定である。
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Causes of Carryover |
交付決定額が申請時に計画した予算よりも少額であったため、研究期間を通して研究を遂行していくためにも、計画的に本年度の予算執行を抑えた経緯がある。次年度の研究進捗と見合わせながら研究経費を使用していく予定である。
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