2019 Fiscal Year Research-status Report
ナノ結晶水分散製剤の長期的な水分散安定性を確保できる方法論の解明と技術開発
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18K04887
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
馬場 耕一 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (00436172)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤ナノ結晶 / 結晶成長抑制 / 難水溶性薬剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
薬剤を静脈注射や点眼投与など、水溶液状の製剤として投与したい場合、薬剤の水分散化が必要となる。もし薬剤が難水溶性である場合、薬剤が分子状態で水中に存在することは難しいので、分子が集合したコロイド状の粒子分散として水中に分散させる必要がある。薬剤の表面を親水性のポリマーや生体適合的な界面活性剤等でコーティングし、薬剤粒子表面を親水化させ、水に分散させることが通常であり、平均粒子サイズとしては通常数十μm程度である。難水溶性薬剤の水分散製剤化のコンセプトは以上の様だが、現実的にはよりシビアな問題が発生する。それはオストワルド熟成である。オストワルド熟成とは、時間とともに微小な薬剤粒子が溶解し、より大きな薬剤粒子に再吸着することで、大きな粒子はより大きく、小さな粒子はより小さく又は消滅し、系として不均一な構造を呈する状態をいう。系の不均一性は、製剤の不均一な品質につながる為、難水溶性製剤の製剤化における大きな問題である。我々が研究課題で取り組んでいるナノ結晶製剤においては、全般にこのオストワルド熟成の発生が顕著である。いかにこのオストワルド熟成を抑えるかがキーとなる。我々はナノ結晶製剤の表面コーティング剤を選択するにあたり、医薬品添加物辞典に記載された医薬品への利用が許可されている精製ラノリンというヒツジの毛から得た脂肪様物質を精製したものを使用した。ナノ結晶には、難水溶性ステロイド製剤の一つであるフルオロメトロンを用いた。過酷試験(60℃の恒温槽に48時間静置)の結果、ラノリンで表面をコーティングしたフルオロメトロンナノ結晶は、ラノリンで表面コーティングしてないフルメトロンナノ結晶では観察されない結晶成長の抑制傾向が観察された。ラノリンを用いたナノ結晶製剤の表面コーティングは有用な手段の一つと考えられるが、更なる検証が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
難水溶性ナノ結晶製剤の水中での結晶成長を完全にまで抑制することは、かなり難しく、現段階で得られている知見を更に深める必要があると考えているが、現状そこまで至っていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き難水溶性ナノ結晶製剤の水中での結晶成長を抑制できる化合物の探索を進めていき、効果的に当該結晶成長抑制を可能とする化合物の候補選択及び方法論について知見を蓄えていく予定である。
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Causes of Carryover |
交付決定額が申請時に計画した予算よりも少額であったため、全研究期間を通して研究課題の遂行が可能となるように、本年度においても、可能な限り節約しながら研究費の運用を行ったため。翌年度に請求した助成金と合わせて使用する予定である。
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