2019 Fiscal Year Research-status Report
少数方位投影像による電子線トモグラフィのための非線形離散階調再構成法の開発と応用
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18K04891
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Research Institution | Kogakuin University |
Principal Investigator |
馬場 則男 工学院大学, 情報学部(情報工学部), 教授 (80164896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
馬場 美鈴 工学院大学, 総合研究所(付置研究所), 研究員 (80435528)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 電子線トモグラフィ / 電子顕微鏡 / 逆問題 / 画像再構成 / 情報欠落問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の段階では、その時点の実績概要で述べたように、本再構成法の完成に必要な最終段階の画質改善の課題が残っていた。しかし、2019年度中に、これが次に述べる改良によって解決した。 本手法では、これまでにない新奇な方法が用いられている。すなわち、透過型電子顕微鏡で撮影された投影像データより決まるある有限個の濃度階調単位(以下“濃度量子”と呼ぶ)を、個々に断層像面に適切に配置して再構成を行う。この濃度量子の数は非常に多いが、段階的にそのサイズを大きなサイズから小さく(最終的には1画素サイズに)変えて行くことで、実用的な処理時間で配置を行うことが出来る。さらに今回、この方式のガイドとなる基準方位を、これまでの0°方向のみからを、複数方位に拡張したところ、少ない撮影枚数からでも画質の低下が抑えられ、本手法を完成することが出来た。具体的には、幾つかの方位ごとを基準(ガイド)方位として断層像を求め、それらの平均から、また次のサイズの濃度量子に変えて断層像を求める方式に改良した。当初の計画通り、電子線CTで固有な問題の試料傾斜角度制限に起因する情報欠落の影響を大きく抑え込むことが出来た。さらに予想外の成果として、従来法の再構成法による断層像より解像度をかなり向上させることが出来た。これらの成果は、電子線損傷に弱いクライオトモグラフィや電子線励起のX線分光(EDS)トモグラフィにも大きく貢献できると考えられる。今後、これらも含め応用実験を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
最終年度における完成を待たずに、実用的再構成法が完成した。これによって、既に、2019年度の終わりには本格的な応用実験が開始出来て、これまでの世界の成果を超える結果が出てきた。従来の2割程度に撮影枚数を減らしても構造が断層像に現れるほど、回復力のある再構成法となった。大きく進展した理由は、本方式の新奇な部分の効果がここにきてようやく表面に現れたからと考えている。すなわち、ここで“濃度量子”と呼ぶ画像を作る最小単位を数多く配置して断層像を作り上げる方式のため、1画素ごとの丹念な調整による画像処理が高解像度を実現したと考えている。詳細には、その濃度量子の再配置方式に工夫があり、特許出願を行うほど独自性があったことによると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
幾つかの従来法を凌ぐ要素を含んだ実用的な再構成法の基本ソフトウェアが完成した。最終年度には、成果を多く出すため、処理時間の短縮を行って、先に述べたEDSトモグラフィや、撮影枚数削減によっての成果の応用実験を多く行いたい。また、応用範囲を広げ、生物試料への応用実験も、必要な改良を行って実施する。さらに、情報欠落問題が概ね回避できたので、解像度の高い世界に例のないナノ解像度の断層像を示し、論文投稿を急ぐ方針である。
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Causes of Carryover |
進捗状況の欄で述べたように、ソフトウェア開発が予想以上に進展し、計画よりも人件費(謝金)がかからなかったが、次年度(最終年度)は、応用実験が多くなるので、実用化に必要なプログラム開発費としての謝金、または、実験試料の作製費の消耗品費に充てたい。
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Research Products
(8 results)