2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of new nanomaterials for application to cancer treatment and medical inspection devices
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18K04893
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
水木 徹 東洋大学, バイオ・ナノエレクトロニクス研究センター, 研究助手 (80408997)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中島 義賢 大阪大学, ナノサイエンスデザイン教育研究センター, 特任准教授(常勤) (40408993)
モハメッド シェイク 東洋大学, 学際・融合科学研究科, 准教授 (50708609)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ材料 / 希少糖 / 酸化グラフェン / がん治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究グループでは、がん治療(ドラッグデリバリーシステム(DDS)やナノ手術、温熱療法)や医療用検査デバイスへ応用可能な新規ナノ材料として、希少糖で修飾した材料の開発を独自に提案しており、本研究では希少糖で機能化されたグラフェン(RSfGO)の開発、機能解析およびそれらの応用を目的としている。本年度は研究実施計画の通り、1. 合成の大容量化、2. 作製した材料の表面物性解析、3. RSfGOの生体適合性の解析の3項目を主とし進めた。 1. 合成の大容量化は大容量化学反応用自動温度コントロールシステムを用いて条件検討を行い達成した。これにより各種解析に十分な量のESfGOが安定的に作製できるようになった。 2. 作製した材料の表面物性解析はRaman spectroscopy、UV-Vis (UV-Visible spectroscopy)、FT-IR (Fourier Transform Infrared spectroscopy)、XPS (X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いて解析することで、酸化グラフェンの還元および希少糖の付与を確認することで、目的通りRSfGOが作製できていることを確認した。 3. 作製したRSfGOの生体適合性の解析には羊赤血球、ヒト培養細胞(IM-9、MCF-7、HCN-1A)、バクテリア(大腸菌、枯草菌)を用いた。赤血球に対しての溶血性試験では、通常の酸化グラフェンは強い活性を示すが、表面に希少糖が付与されたRSfGOでは溶血性の大幅な低下が確認された。一方バクテリアや培養細胞を用いた解析では表面に付与された希少糖の種類により、生体適合性・細胞毒性が大きく変化することが確認出来た。 これらの結果は、将来的なRSfGOのがん治療や医療用検査デバイスの開発への応用にあたり、とても重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は申請時の研究の目的に沿って行っており、本年度は1. RSfGO合成の大容量化、2. RSfGOの表面物性解析、3. RSfGOの生体適合性の解析まで進めてきたが、ほぼ研究実施計画通りの進捗状況となっている。 RSfGOの生体適合性解析においては羊血液由来の赤血球、ヒト培養細胞としてIM-9(多発性骨髄腫・Bリンパ球様)、MCF-7(乳腺がん・上皮細胞様)、HCN-1A(脳神経・正常細胞)、バクテリアとしてグラム陰性菌である大腸菌(Escherichia coli K12)、グラム陽性菌である枯草菌(Bacillus subtilis JCM1465)を用いた。 赤血球に対しての溶血性試験ではRSfGOが高い生体適合性を示す一方で、バクテリアやヒト培養細胞に対しては表面に付与された希少糖の種類により、生体適合性や細胞毒性が大きく変化することが確認された。表面に付与される希少糖の種類により生体への影響や毒性が変化することは想定していた結果の範囲内であったが、希少糖自体が有する機能との関連性が非常に低かったことは予想外であった。 RSfGOの機能の違い、つまり付与された希少糖の違いによりそれぞれの開発に適したRSfGOや構築方法を決定しDDSや医療用検査デバイスへ応用する。 本年度は、国際学術雑誌1件、国際会議2件の発表を行い、初年度としては十分な研究発表を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度においては、今後のDDSやNIR photothermal therapyなどのがん治療への応用や医療用検査デバイスの作製に向けて、本年度既に進めてきたRSfGOの生体適合性の解析において、より多くの種類のヒト培養細胞(血球細胞、上皮細胞、内皮細胞など複数のがん細胞および正常細胞)や生体高分子(主にタンパク質および核酸)も対象とし進める。また、強い細胞毒性やがん細胞の増殖抑制を示したRSfGOについては、そのおおよそのメカニズムを明らかにするためa) 細胞死のタイプ(アポトーシスの誘導)、b) 細胞周期への影響、c) 代謝の抑制、d) 細胞膜へのダメージ、e) 発現タンパク質の変化に着目し、Flow cytometer、共焦点レーザー顕微鏡、Plate reader、二次元電気泳動など各種装置や手法を用いて解析していく。複数種類のRSfGOおよび多数の細胞を同時に準備し各種解析を進めていくことになりこれらの研究内容は個々に大変長い時間を要するため、次々年度前半まで時間をかける予定で順次着実に行っていく。 一方で、余ったRSfGOを利用して電気的特性の測定も試みる。一般的に還元型酸化グラフェンはグラフェンと酸化グラフェンの中間的な性質を示す事が知られているが、電気的特性においても同様である。不導体である酸化グラフェンの電気的特性がRSfGOになることで変化しているか、希少糖の種類により違いはあるのか、非常に興味深くある一方でこれらは将来的な医療用デバイス作製への応用において極めて重要なデータとなる。 上記の実験を行いながら、最終年度に予定している、がん治療や医療用デバイスへの応用において適した材料や手法を検討していく。
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Causes of Carryover |
本年度の反応液の大容量化の検討において「大容量化学反応用自動温度コントロールシステム」を導入するための予算を申請していたが、申請者の所属している研究センターに設置してある同様のシステムが本研究に使用可能な状態となったため購入を取りやめた。一方でその他の検討項目を精力的に進めたため薬品などの消耗品に使用する費用が多くなり、初年度予定していた予算の大部分は既に使用し終えている。 次年度の研究で細胞培養用の培地や各種解析用の試薬など多くの物品費が必要となるため、本年度の残予算は有効に活用する予定である。
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