2018 Fiscal Year Research-status Report
炭素ナノ空洞を利用した極性分子の配列・配向制御による極微小誘電体の作製と物性解明
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18K04894
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松田 和之 神奈川大学, 工学部, 教授 (60347268)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 極性分子 / ナノ細孔 / カーボンナノチューブ / 水分子 / 誘電体 |
Outline of Annual Research Achievements |
単層カーボンナノチューブはナノメートルスケールの1次元的な細孔をもち、そのナノ細孔に分子を内包することができるため、単層カーボンナノチューブを鋳型として用いることでナノスケールの微小な物質を作製することが可能である。このようなナノ細孔内部の物質では通常のバルク物質とは異なる物性が出現することが期待される。そこで本研究では極性分子の一種である水分子を内包させることで、単層カーボンナノチューブのナノ細孔内部に微小な誘電体を作製し、その構造と電気特性を、核磁気共鳴実験、X線回折実験、走査型プローブ顕微鏡、直流電気抵抗測定、交流インピーダンス測定、古典分子動力学シミュレーションにより調べている。本年度は、主に平均直径が約1.4nmの単層カーボンナノチューブに水を内包させた試料について集中的に調べた結果、核磁気共鳴実験とX線回折実験から環状構造の水結晶が形成されることが確認され、またこの単層カーボンナノチューブのフィルム試料の電気特性を計測した結果、水吸着によりフィルム試料の直流電気抵抗が大きく減少し、さらに交流インピーダンスも変化することを確認した。また、チューブの直径方向に圧力を印加することで変形させた扁平型の単層カーボンナノチューブについて、内包水の液体-固体相転移挙動を古典分子動力学シミュレーションにより調べた結果、変形していない単層カーボンナノチューブの内包水の挙動とは異なること、さらに低温相ではリボン状の水結晶が形成されていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたように、単層カーボンナノチューブの細孔に閉じ込められた水の構造と電気特性に関するいくつかの新しい知見が得られ、これらの研究結果に関して日本物理学会で発表を行った。また、圧力印加により変形させた扁平型の単層カーボンナノチューブの内包水については、変形していない単層カーボンナノチューブとは大きく異なる挙動を示すことを見出し、この結果について論文発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に引き続き、核磁気共鳴実験、X線回折実験、走査型プローブ顕微鏡、電気抵抗測定、誘電インピーダンス測定、古典分子動力学シミュレーションにより、水分子を内包した単層カーボンナノチューブの構造と誘電特性を調べる。特に平均直径の異なる数種類の単層カーボンナノチューブについて実験を行い、内包水の構造と電気特性がナノチューブ直径にどのように依存するかを調べる。また、本年度に見出した扁平型の単層カーボンナノチューブの内包水については、主に分子動力学シミュレーションにより構造を調べる。
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Causes of Carryover |
扁平型の単層カーボンナノチューブに内包された水の相転移挙動と構造について、当初は予想していなかった重要かつ興味深い結果が得られ、この研究を優先させて古典分子動力学シミュレーションを集中的に行ったため、本年度の予算に計上していた、高純度試料、試料調整用薬品、試料石英管、液体窒素等寒剤など実験に必要な消耗品の使用量が当初の予定より少量となり、次年度への繰越金が生じた。繰越金はこれら実験消耗品に加え試料調整機器の購入費に充てるほか、分子動力学シミュレーションの計算の高速化をはかる目的で、計算機メモリとシミュレーションソフトウェアを追加購入するための費用の一部としても使用する計画である。
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Research Products
(5 results)