2019 Fiscal Year Research-status Report
黒鉛のボールミル粉砕によるキャパシタ用炭素電極の開発と容量発現メカニズムの解明
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18K04899
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
加登 裕也 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (10624348)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | キャパシタ / 黒鉛 / 粉砕 / 炭素 / 表面官能基 |
Outline of Annual Research Achievements |
天然黒鉛を原料として、粉砕などの簡便な操作によるキャパシタ用電極材料製造の可能性について、昨年度に引き続き検討を行った。遊星型ボールミル(Fritsch製Premium Line P-7)粉砕機を使用し、主に直径1 mmのボールを用いて、回転数700 rpm、粉砕時間150分の条件で粉砕処理を行った。粉砕処理時の雰囲気が黒鉛粉砕品の官能基およびそのキャパシタ特性に及ぼす影響について検討を行った。また、充電時の電極膨張抑制に関する検討を行った。 昨年度までの検討により、空気中で黒鉛の粉砕処理を行うと、含酸素官能基および含窒素官能基が増えることが判明した。今年度は、空気に加え、窒素、酸素、アルゴン雰囲気で黒鉛の粉砕処理を行った後、XPSおよび元素分析により、酸素および窒素の定量を行い、電極特性への影響を評価した。結果として、窒素は空気中の窒素ガスが分解して表面官能基として取り込まれることが示された。酸素は、アルゴンまたは窒素雰囲気の場合に減少する傾向が見られたが、原料黒鉛に比べると増大した。XPSなどの測定の際に一時的に大気に触れるため、一部酸化された可能性がある。一方で、これらの粉砕品を電気二重層キャパシタ用電極材料として評価したところ、容量、耐久性ともにほぼ同様の特性を示した。以上のように、異種雰囲気で粉砕処理を施すと表面官能基には若干の差異があるが、電極特性にはほとんど影響しないことを明らかにした。 次に、黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボンなど種々の炭素材料の粉砕品について、電極の膨張試験を行ったところ、ハードカーボン系材料の場合に膨張しにくいなど、炭素種に依存する傾向が見られた。しかし、明白な因果関係は不明であり、膨張抑制の指針を得るためには、今後、炭素の形状やサイズなどにも注目したさらに詳細な検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
異種雰囲気下で粉砕処理を行うと、表面官能基に差異が生ずるが、電極特性には大きな影響を与えないことを明らかにした。また、電極膨張に関して、ハードカーボン系材料が膨張しにくい傾向を示すことを見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の検討により、ボールミル処理中に容器内の窒素ガスが分解して、炭素の表面官能基として取り込まれることが判明したが、その量はごく微量である。一方で、活性炭電極は窒素ドープにより耐電圧・耐久性が向上することが知られている。今後、ボールミル処理時に、炭酸アンモニウムなどより分解しやすい窒素源を添加することで、積極的な窒素ドープを行い、容量、膨張率など電極特性への影響を評価する。この際、ジルコニアよりも安価なアルミナ製容器を主に用いて、黒鉛の他種々の炭素材料を原料とした検討を行う。
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Causes of Carryover |
実験の都合上、次年度に繰り越した。アルミナ製容器を追加で購入し、2セル同時運転を行うことで、アルミナ容器を用いた粉砕処理実験を加速させる。
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