2019 Fiscal Year Research-status Report
Studies of contact and size effects for a single nano-particle by X-ray diffraction measurements
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18K04904
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Research Institution | Japan Synchrotron Radiation Research Institute |
Principal Investigator |
福山 祥光 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 回折・散乱推進室, 研究員 (20332249)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / レーザートラップ / X線回折 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ナノ粒子に対する特異な構造物性が基礎と応用の両面から注目されている。ナノ粒子の特異な物性は粒子のサイズと形状に大きく左右されることがこれまでの研究で知られている。一方、これまでナノ粒子の研究はサイズや形状が異なるナノ粒子の集団に対して行われてきた。これは孤立したナノ粒子1粒に対する確立した試料保持法がなかったためである。また、ナノ粒子の物性は粒子と装置との接触の有無にも大きく左右されることが容易に予想される。本研究の第一の目的は、小型レーザーによる光トラップと放射光X線マイクロビームを組み合わせることにより、粒径100ナノメートル以下のナノ粒子1粒を非接触に保持し、X線回折像を測定する手法を世界に先駆けて開発することである。第二の目的は、開発した手法を用いて、ナノ粒子表面の接触効果(他の粒子や壁との接触による効果)と粒径・結晶構造の関係を明らかにすることである。また、粒径効果により結晶相転移を起こす試料に対して単粒子結晶解析を実現し、従来の多粒子に対する測定では得られなかった情報を得ることも目的としている。 本研究課題では、従来のナノ粒子の集団に対する測定では知り得なかった、粒子-粒子間相互作用や粒子-壁間相互作用の存在やその大きさの粒子サイズへの依存性を明らかにできることが期待できる。また、粒子集団には必ず存在する粒径分布の影響を排除した物性測定を実現できることから、ナノ粒子1粒の真の物性を解明出来ることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度には前年度に開発した「小型化・ユニット化した非接触式試料保持装置」の評価を行い、その結果を論文として発表した。小型化・ユニット化した非接触式試料保持装置を用いたX線回折計を評価するために、粒径約200nmの酸化亜鉛(ZnO)粒子1粒のX線回折測定を行った。装置を小型化・ユニット化し、レーザーと試料の距離を約1mに短縮したことにより、試料のドリフトやジッターを約1umに抑制することに成功した。これにより、X線マイクロビーム(ビーム径約3um)と試料粒子の長時間の安定的な空間的オーバーラップを実現し、質の高いX線回折像を得た。ナノ粒子1粒に対するX線回折像から粒径(結晶子サイズ)を計測する手法も確立した。粒径は回折線幅のブロードニングから装置関数を差し引いて見積もった。通常、装置関数は粒径の十分大きな標準粒子をキャピラリーに封入しX線回折測定を行い評価するが、ナノ粒子1粒のX線回折では試料の存在する空間領域が非常に狭いため、その空間領域を考慮した装置関数の補正を行った。粒径約200nmの酸化亜鉛粒子1粒のX線回折像の詳細な解析から、酸化亜鉛粒子1粒の構造と同時に結晶子サイズを決定できた。また、この結果を論文にまとめて発表した (X-ray diffraction measurement of a single nanometre-sized particle levitated in air by an optical-trap sample holder, Yoshimitsu Fukuyama, Nobuhiro Yasuda, Kunihisa Sugimotoa, and Shigeru Kimura, J. Synchrotron Rad. (2020). 27, 67-74) 。
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Strategy for Future Research Activity |
小型化・ユニット化した非接触式試料保持装置と放射光X線マイクロビームを組み合わせたX線回折測定装置を用いて、「ナノ粒子の接触効果と粒径・結晶構造の関係」、「粒径効果による結晶相転移や光照射に対する結晶構造の変化」を順次明らかにする。令和元年度に導入した倍率が1000倍のマイクロスコープを利用し、X線マイクロビームと試料粒子の空間的オーバーラップの精度をさらに向上させる手法を確立する。粒径が200nm以下の酸化セリウム粒子と酸化亜鉛粒子1粒のX線回折測定を行い、従来の粉末測定の結果と比較し、ナノ粒子の接触効果と粒径・結晶構造の関係を明らかにする。 特に、粒径効果による結晶相転移が報告されているチタン酸バリウムの微小粒子1粒に対してX線回折測定を行う。測定する粒子の粒径は200nm以下。光トラップした単粒子とキャピラリーに封入した多粒子のX線回折像を測定することにより結晶構造を比較する。これまで主に粉末X線回折法によりチタン酸バリウムの粒子集団に対して研究がおこなわれ、結晶相転移やコアシェルモデルが議論されてきた。本研究では、チタン酸バリウムのナノ粒子1粒を非接触に保持することにより、従来の多粒子に対する測定では得ることができなかった情報を得る。また、令和元年度に導入した音響光学変調器を用いてトラップ用レーザーに強度変調をかけることにより、レーザー光照射の有無や強度による結晶構造の変化や応答を解明する。
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