2018 Fiscal Year Research-status Report
ナノ制限空間を用いる高感度・ウエアラブルな印刷有機FET型非標識免疫センサの創出
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18K04910
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
長峯 邦明 山形大学, 大学院有機材料システム研究科, 准教授 (00551540)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 有機FET型免疫センサ / 汗 / プリンテッドエレクトロニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、採血不要で、汗成分から体調を測り、管理する新規免疫センサの創出である。その実現にむけた課題は、①定期的な汗の採取法の確立と、②微量汗成分の高感度・高選択性検出である。 ①新規汗採取法の確立 皮膚にリン酸緩衝生理食塩水を接触させるだけで汗成分を採取できる新規汗成分採取法を世界で初めて確立した。当初は運動時の発汗成分と言う限られた条件下での計測を想定していたが、これにより定期的な汗成分の採取が可能になった。種々アッセイキットを用いて汗成分を定量した結果、汗原液濃度の約1/10に希釈されて採取されることが分かった。例えばIgG濃度は40 ng/mLであった。今後はこの被験者試験を繰り返して、コルチゾールを含め免疫センサで検出し得る様々な汗中マーカーを探索し、本研究で開発する免疫センサの性能(ターゲット、感度、定量範囲)を設定する。 ②非標識免疫センサの基盤技術構築 免疫反応場のナノ空間化によるセンサの高感度化の程度を示すには、平面反応場での計測結果を基準とし比較する必要がある。そこで、ナノ空間計測の前段として、抗体修飾平面電極を用いた免疫センサの構築から始めた。抗原抗体反応検出の指標として、抗体/測定溶液界面の電気二重層容量に加え、電荷を有する抗原の捕捉に起因した電極電位変化、更には抗原抗体複合体による下地電極反応阻害の3手法のシグナルを比較した。それぞれ抗原IgG濃度に依存したシグナルを得ることができナノ空間化による高感度化の比較データを得ることができた。一方で、応答の再現性に若干課題があり抗体の配向性を考慮した固定化法の必要性が明らかになった。MgO鋳型メソポーラスカーボンは準備済みであり、電極表面修飾までできている。メソ孔内壁のカルボキシル基に対し架橋剤で抗体を共有結合させることを想定している。原理上は上記3つのシグナルいずれもナノ空間で応答が増幅すると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
汗成分計測の被験者試験は当初最終年度を想定していたが初年度に前倒しし、運動や発汗誘導剤投与など特殊発汗条件不要で汗成分を採取可能としたことは想定以上の進捗である。汗採取液であるリン酸緩衝生理食塩水をゲル化し、バイオセンサの1つである酵素センサ表面を被覆することで、ゲルに指を触れるだけで汗中乳酸を採取しながら連続的に検出可能な世界初の汗センサの確立に成功した。現在、この新規汗センサへの免疫センサ搭載を検討している。 免疫センサに関しては、比較用の抗体修飾平面電極の開発から始めたため当初の予定より遅れたが、そのおかげで抗体固定化膜作製の基盤技術をおおむね確立でき、メソポーラスカーボンへ応用できる段階に至った。また、汗成分採取法を確立できたことで明確なセンサ仕様を決定できるようになったため、その仕様を基に高感度化を目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
①被験者試験による汗成分の定量 汗中に存在する血中バイオマーカーを、市販定量キットを用いて探索する。候補は、コルチゾール、IgG、TNFα等である。本結果をもとに、センサ仕様の決定、及びセンサ応用の拡張を図る。学内における被験者試験の承認は取得済みである(承認番号30-7) ②メソポーラスカーボンを用いた免疫センサ開発 メソポーラスカーボン内壁へ抗体を固定化した電極の作製。交流インピーダンス法、開回路電位計測、及びCV法による抗原捕捉の検出。メソ孔の孔径、ゼータ電位、デバイ長(イオン強度より算出)とシグナル強度の関連性を明らかにする。電気二重層容量、電位、電流の3つのシグナル強度を比較し、仕様に適した計測法を確定させる。それに合わせて周辺回路を開発する。現状、申請者らは電位と電流計測用の印刷有機回路は開発済みである。電気二重層容量計測用の、PEDOT:PSSを半導体とした電解質ゲート型トランジスタは、回路単体での基本動作の評価までは済ませてあるが、抗体修飾電極と接続した時の動作検証が今後の課題である。
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Research Products
(17 results)