2020 Fiscal Year Research-status Report
データ駆動型マテリアルデザインによる新奇高エントロピー合金材料の探索
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18K04926
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 鉄也 東京大学, 物性研究所, 特任准教授 (00506892)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 自動ハイスループット材料計算 / 高エントロピー合金 / KKRグリーン関数法 |
Outline of Annual Research Achievements |
等組成比を有する4元高エントロピー合金(FCC相とBCC相)に対して、全電子Korringa-Kohn-Rostoker(KKR)グリーン関数法に立脚したAkaiKKRコード(http://kkr.issp.u-tokyo.ac.jp)を利用して広大な材料空間を網羅探索した。計算対象はすべて配置不規則性を有している。一般的な電子状態計算手法ではこのような配置不規則系性を取り扱うことはできない。また利用価値が高くユニークなデータベースを構築するのに必要となる有限温度の磁気特性や伝導特性等を効率よく計算することは非常に困難を伴う。それゆえ、我々は不純物ポテンシャルの散乱効果を平均場で置き換えるシングルサイト近似の中で最も高精度であるコヒーレントポテンシャル近似(CPA)を用いた。CPAはシングルサイト近似のため格子最適化を行うことができないが、配置不規則系をスーパーセルを用いることなく取り扱うことができ計算コストを劇的に減少させることが可能である。強磁性キュリー温度はLiechtensteinの公式から計算された磁気的交換相互作用を古典ハイゼンベルグ模型にマッピングすることで見積り、電気伝導率の計算はKubo-Greenwood公式を適用した。全電子計算であるため擬ポテンシャルやカットオフエネルギーによる精度のチェックは必要としない。その他の数値パラメーターや収束過程の制御はすべて自動的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一原理計算に基づき広い材料空間を対象に網羅計算を行うためには(1)材料パラメーターでの並列化による探索の高速化、(2)計算コード自体の高精度化・高速度化、の2つが必要になる。我々のアプリケーションでは材料パラメーターに対する並列計算には多数のノードを使用したMPIを適用し、1つの材料に対する電子状態計算には1ノードを割り当てOpenMPによって並列化されたコードを用いて計算を実行する。材料パラメーターでのMPI並列では、通信は計算結果を集める時に必要になるだけなので並列化効率はほぼ100%を達成できる。 現在、海外においてNOMAD、OQMD、AFLOW、Materials Project等、第一原理計算を用いた物性データベースの構築が精力的に行われているが、これらのデータベースは単体物質や単純化合物をターゲットにしており、また含まれる物理量も電子状態や構造安定性に関わる情報に限られる。今回、我々が富岳を用いて構築したデータベースは不規則性材料における磁気特性(キュリー温度)や伝導特性を含んでおり世界に例をみない。また、未踏の材料空間での新機能材料を発見が可能になる。例えば、高エントロピー合金MnFeCo系は高磁化、高キュリー温度、高電気抵抗率を有しているので新規の軟磁性材料として期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
自動網羅計算ツールは順調に開発しており、データベースも整いレポジトリサービスを利用した公開も実行中である。今後はコンピュテーショナルマテリアルデザインワークショップ(CMD@大阪大学)を利用し、開発したツールのチュートリアルを実施する。同時にオンラインでの国際会議を通じ研究結果の広報に努める。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響による物品調達の難航かつ国内会議の中止による出張のとりやめのため。
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