2019 Fiscal Year Research-status Report
アモルファスまたは微結晶酸化物半導体の熱電応用に関する研究
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18K04939
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
上沼 睦典 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (20549092)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 熱電変換 / 薄膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
熱電変換素子の応用範囲を広げるため、本研究では既存材料とは異なる利用価値のある材料に対して、基礎的な物性の評価や実デバイス応用に向けた動作実証を目的としている。特に透明酸化物半導体に着目し、半導体薄膜熱電デバイスの実現に必要な材料やプロセスを開発し、熱電応用に対するポテンシャルを検証している。 初年度は、InGaZnO薄膜に対して、成膜条件・組成比・結晶性などに対する熱電性能の変化を明らかにした。本年度は、異なる元素を持つ材料としてInWZnOについて特性の違いを評価した。成膜時の酸素流量比と成膜後の熱処理を適切に実施することでInGaZnOを超える特性が得られることが明らかとなった。また、実デバイス応用の際には、p型材料も必要となるため、可視光に対して透明材料であるCuIやCuOxについてもスパッタにより成膜し熱電特性を評価した。熱電特性ではCuI膜がCuOx膜にくらべ比較的大きな値を示したが、安定性に対しては課題が残っている。さらにCuIおよびCuOxのそれぞれに対して、InGaZnOと接合したpn接合を形成し、熱電特性に与える接合の影響を評価した。その結果、縮退した半導体材料のpn接合では温度差がゼロでも微小な電圧(~10マイクロボルト程度)が生じている事が明らかとなり、新たな研究への可能性が示唆された。 また、薄膜熱電デバイスの試作に関する研究では、初年度にPEN基板上でInGaZnO膜を利用した透明薄膜熱電デバイスを提案し動作実証に成功した。本年度は、シミュレーションをもとに構造の最適化を実施し、Ni-Crを利用した試作デバイスにおいて1マイクロW/cm2以上の発電を確認し電力密度向上を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アモルファス酸化物半導体薄膜の熱電物性に対し多くの異なるプロセスや材料に対するデータが得られており、計画通りに進んでいる。また、薄膜の熱電デバイス応用に向けた研究においても、着実にその発電能力の向上が見られており、応用に向けた実験についても順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
アモルファス酸化物材料のゼーベック係数および電気伝導度について、これまで得られた多数の実験データを理論的な面から解析する。これまでに得られた実験データは、異なる成膜条件や熱処理温度などであり、半導体膜のホール移動度と熱電特性については相関がみられているが、膜質と熱電特性の関係についても明らかにする必要がある。特に半導体材料中に存在する欠陥の種類や状態密度の影響がどのように熱電特性へ影響を及ぼすのか評価を実施する。具体的には、状態密度や欠陥の影響を含んだシミュレーションを実施し、状態密度や欠陥準位と電気特性の相関関係を明らかにする。 また、デバイスにおいては、実用に向けて小さい温度差(数度程度)で目標の電力密度が得られる構造をシミュレーションにより解析し、そのために必要な膜性能や材料について明らかにする。
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