2018 Fiscal Year Research-status Report
Microspot光電子顕微鏡による表面プラズモンのイメージング
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18K04942
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渋田 昌弘 慶應義塾大学, 理工学部, 特任准教授 (70596684)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 表面プラズモン / 光電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
金属と誘電体の界面において光励起により生じる表面プラズモンポラリトン(以下、表面プラズモン)は光エネルギーの高効率利用や高密度・高速な情報通信に不可欠な要素である。このようなプラズモニックナノデバイスの応用展開に向けて、無輻射で失活する表面プラズモンを可視化する技術の確立が不可欠であり、本研究計画ではフェムト秒超短パルスレーザーと光電子放射顕微鏡を組み合わせた独自の装置を構築し、この研究課題に取り組んでいる。 当該年度は、モデル系としてC60フラーレンの薄膜を金(Au(111))基板上に作製した試料を対象に、平坦な金属と誘電体(C60)との界面を伝搬する表面プラズモンのナノスケール可視化と物理特性の評価を行った。一般に、表面プラズモン特性は誘電体膜の存在により容易に変調を受けるため、誘電体の種類や膜厚により変調の程度を精密に評価することはプラズモニックデバイスの高度化において重要である。 C60膜が3 nm程度(~分子3 層)までの薄い膜厚領域においては、界面を伝搬する表面プラズモンを明瞭に捉えるとともに、その膜厚の変化に伴う物理特性(波数、分散など)を精密に評価することに成功した。このことは、本研究課題で適用している方法論が高い利用価値を持っていることを示す結果である。 一方で、C60の膜厚が厚くなると(> 5 nm)、本装置による表面プラズモン観測が困難となった。この課題を克服するために、既存の金属ナノクラスター蒸着装置を用いて、試料表面にごくわずかの銀ナノクラスターを蒸着したところ、光電子量が大幅に増加し、C60/Auの"埋もれた"界面の表面プラズモン特性を評価することに成功した。この成果は、光電子を検出するという原理的な制約を取り払い、当該方法論の適用対象を飛躍的に拡大できる大きな一歩であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
C60/Au界面において伝搬する表面プラズモンを実空間で明瞭に捉えるとともに、C60膜厚が1 nm(1分子層程度)異なるだけで表面プラズモン特性が鋭敏に変化することを直接的に評価した例は無く、プラズモニックデバイスの構築において基板や保護層として用いる誘電体層の最適化に向けた重要な知見であると考えられる。 さらに、金属ナノクラスターをわずかに蒸着することで、5 nm 以上のC60膜に"埋もれた"界面の表面プラズモンを非常に高感度で評価できることを示す結果は、研究代表者がこれまでに推進してきた研究基盤を融合させることにより初めて可能にした画期的な研究成果であり、本方法論を高精度なプラズモニックナノデバイス特性評価法として確立する手掛かりを得た。 従って、本研究課題は当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に得られた銀ナノクラスターの蒸着による表面プラズモンイメージングの高感度化は、本年度以降も本課題研究の成果の軸となる重要な成果である。高感度化の原理は、銀ナノクラスター近傍で生じる局在表面プラズモン共鳴によるものであり、その結果フェルミ準位近傍の電子が高効率で光励起されるためであると考えている。そこで、銀ナノクラスターの局在表面プラズモン共鳴周辺の励起波長において、界面を伝搬する表面プラズモンの見え方を追跡することでこの効果を検証する。 上記と並行し、当該年度より推進中であるプラズモニックデバイスのモデル試料の作製と、表面プラズモン特性評価をより高度化するための光学機器の導入を進める。 さらに表面プラズモンイメージングの対象を、これまでに同方法論で報告のないアルミニウム/誘電体界面へと拡張する。アルミニウムは表面プラズマ振動数が大きく紫外光領域の光応答性に優れているものの、酸化物皮膜によるプラズモン特性の制御が課題であるため、この点に着目し評価を進める。
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Causes of Carryover |
当該年度において、フェムト秒レーザーと光電子顕微鏡を組み合わせた表面プラズモンイメージングを金属クラスターにより飛躍的に高感度化することに成功した。この成果は当初の予測を上回る画期的なものであり複数回の検証実験に時間を要したため、当初研究計画で計上していた物品の購入が滞った。次年度は当該年度で得た高感度測定の検証をさらに進めるとともに、当該年度で計画した研究を推進するため、プラズモニックデバイスのモデル試料の作製と、測定をより高精度化するための光学機器の購入する予定である。
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Remarks |
(1)研究代表者が所属する研究室(研究室主宰者:中嶋 敦教授)のホームページ
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Research Products
(20 results)