2018 Fiscal Year Research-status Report
無秩序化した有機ヘテロ界面を導く電子的および構造的要因の解明
Project/Area Number |
18K04944
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
赤池 幸紀 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (90581695)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若山 裕 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 副拠点長 (00354332)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 無秩序化 / 分子配列 / 有機ヘテロ界面 / 走査トンネル顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度はまず、分担者であるNIMS若山裕MANA副拠点長が保有する超高真空STMを使用し、Ag(111)上に形成したフッ素化銅フタロシアニン(F16CuPc)/セキシチオフェン(6T)界面の分子配列を直接観測した。F16CuPc単層に6Tを室温で積層すると、基板表面の[1-21]方向に配列したF16CuPcの長距離秩序が崩れ、6Tはcis-trans異性化によって様々に屈曲してF16CuPcと分子レベルで混合することが分かった。CuPc/6T界面のSTM観測との比較から、F16CuPc-6T間の水素結合によって無秩序構造が安定化したと考えられる。また、6Tの代わりに剛直なセキシフェニル(6P)をF16CuPc単層に蒸着すると、F16CuPc二分子を6Pが挟み込んだ超分子構造を局所的に形成することも分かった。これは、6PがF16CuPcのおおよそ2倍の大きさを持つことに由来する。F16CuPc/6P界面のSTM観察との比較から、F16CuPc/6T界面で短距離・長距離秩序が消失するのは、6Tが柔軟な分子配座をとれることが要因として考えられる。これらの結果をまとめた論文は、J. Phys. Chem. Cに投稿し、受理された。 また、申請者の所属が変更後は、2019年度に行う表面エネルギーの算出に向けた接触角計のセットアップを行った。水とジヨードメタンを用いた接触角測定により、F16CuPc薄膜の表面エネルギーが分子配向に依存することを見出した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
NIMSにおいて、有機ヘテロ界面を系統的にSTM観察したことにより、室温においてなぜF16CuPc/6T界面の分子配列が乱れるか、の分子的要因を把握できた。しかし、水素結合の有無を赤外吸収分光で調べたり、エントロピーの効果を調べるまでには至らなかった。一方、2019年度に実施予定であった、F16CuPc薄膜の表面エネルギーの分子配向依存性については、前倒しで進めることができた。結果として、所属先が変わったことによる試料作製装置の移動、再セットアップがあった割には、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、銀単結晶基板に形成した二分子ヘテロ界面における分子配列の乱れの原因について、分子レベルでの理解を深めることができた。当初予定していた、F16CuPcと6Tの間に存在すると考えられる水素結合の有無の実験的検証を分子科学研究所UVSORにて調べることを予定している。また、厚膜のF16CuPc/6T界面を作製し、構造無秩序化が分子配向に依存するかどうかをX線回折や、和周波発生分光で確かめる。また、構造無秩序化の様子を分子レベルで調べるため、分子動力学シミュレーションも実施する。
|
Causes of Carryover |
消耗品の購入において端数が発生した。翌年度の助成金に繰越し、なるべく切りがよい使用方法を心掛けたい。
|
Research Products
(9 results)