2018 Fiscal Year Research-status Report
大容量金属負極のための超マイクロ電極を利用したリチウム金属の電析機構の解明
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18K04965
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西川 慶 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主任研究員 (30457824)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リチウム金属 / 電析 / デンドライト / 表面皮膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウム金属の電析の基本的な反応メカニズムの解明のために、各種電解液中を用いてマイクロ電極上への電析実験を行い、SEM-EDS、直交型FIB-SEMを用いて、その形態観察を行った。 これまでにLiPF6をリチウム塩(濃度1mol/L)とし、また溶媒としてEC(エチレンカーボネート)を単溶媒で、もしくはEC:DEC(ジエチルカーボネート)、EC:DMC(ジメチルカーボネート)の混合溶媒系を用いた際に、均一な柱状のリチウム金属が電析されることを見出した。他のリチウム塩では、典型的なデンドライト形成が生じており、平滑な電析形態を有するリチウム金属の電析のためには塩・溶媒の選定が非常に重要である。LiPF6を用いた際の電析リチウム金属からは、EDS分析より、Fのスペクトルが非常に強く検出されており、Oが非常に強く観測される他の塩の場合と非常に対照的である。このFの由来は、LiPF6塩を起源とした、電解液中に微量に含まれるHFであると考えられ、電析リチウム金属がHFと反応することで表面にLiFを多く含んだ皮膜が形成されることが、電析リチウム金属を平滑化することに非常に重要な役割を果たしているのではないかと考えている。 また、LiPF6を塩とした際でも、溶媒をPC(プロピレンカーボネート)とすると、デンドライト形成が確認されている。これは、電析時に溶媒の分解反応もある程度同時進行するために、リチウム金属表面に存在する皮膜の組成が塩と同時に溶媒にも依存していることが要因であると考えている。この電解液系において、LiPF6の濃度を室温での飽和濃度近くまで高くすると、電析形態が非常に平滑化されることも確認している。LiPF6の濃度を高くすることで、ほとんどのPCが溶媒和構造を担い、その分解反応が抑制されることで、上述したEC系の電解液系と同様の反応メカニズムで電析反応が進んだためと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ当初の計画通りに研究を遂行できている。平成30年度に計画していた電析リチウムのSEM観察、直交型FIB-SEMによる3次元構造観察を行い、研究実績欄に記したような成果を得ている。これらの成果に関しては、論文執筆中であり、31年度中に少なくとも2報は投稿予定である。また、電気化学的核発生から結晶成長への遷移過程についても、SEM観察による核発生密度、析出粒子(核)サイズの遷移などについて検討を進めており、リチウム金属の電析メカニズムの解明についてほぼ研究計画どおりの進捗であると判断できる。TEMを用いた電析リチウム金属の、観察・分析に関しては、NIMS内の共用設備群である蓄電池基盤プラットフォームへ2018年度後半に大気非暴露冷却ホルダーが導入されたため、そのホルダーを使用した観察を開始している。この観察は世界でも最先端の観察技術であり、観察条件の最適化などを進めている段階である。 研究経費の部分において、当初予定していた干渉計画像解析ソフトの導入を30年度に行えていない。これは、干渉顕微鏡メーカーとの交渉の中で、使用している干渉顕微鏡と最新のソフト間での互換性を確認できていない(保証できない)とのことで、現在もメーカーに互換性確認の作業依頼中である。31年度には干渉計測定を開始予定であるが、まずは既存の解析ソフトを利用しての干渉計測定を行い、互換性が確認出来次第、解析ソフトの導入予定である。その費用は場合によっては、他予算(交付金など)との合算での充当を考えている。30年度に解析ソフトに充当予定であった経費は、電気化学セルやリチウム金属専用の冶具などに充当した。これは研究を迅速に遂行するために新たに必要になったものである。 以上のような点から、概ね順調と判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度はほぼ予定通り、研究を遂行できており、2019年度以降も予定通り研究を進めていく。2019年度からは、本格的に干渉顕微鏡を用いた電極表面近傍でのリチウムイオン濃度分布のその場測定を開始し、電析過程、電析表面形態との相関性を見出すことに注力していく。また、2018年度後半より開始した、TEMを用いたリチウム表面皮膜の解析に関しては、観察条件を最適化することで、表面皮膜の電解液依存性について言及できるよう特に努める。
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Research Products
(6 results)