2019 Fiscal Year Research-status Report
大容量金属負極のための超マイクロ電極を利用したリチウム金属の電析機構の解明
Project/Area Number |
18K04965
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西川 慶 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主任研究員 (30457824)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | リチウム金属 / 電析 / 表面皮膜 / 核生成 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
リチウム金属の電析反応メカニズム解明のために、超マイクロ電極上での電析実験を行い、SEMなどを用いてその形態観察を行った。 1mol/L のLiPF6-EC:DEC(=1:1)電解液系において、電析初期の析出形態観察を行い、この電解液系においては非常に多くの電析核が電極上に一様に形成されることを確認した。またそれらの核が経時的に結晶成長する様子も段階的に電極の観察を行うことで確認できた。この様相は、直行型FIB-SEMによる電析リチウム金属の3次元構造と非常によく一致するものであり、この電解液系においては、核発生から結晶成長の競合が生じ、最終的に均一なサイズを有する柱状析出となっていることを見出した。(現在、この結果については論文執筆中である) また、SEM-EDS観察により、LiPF6-EC:DEC(=1:1)電解液においてのみ、電析リチウム表面に多量のF原子が存在することが確認できており、リチウム金属の表面皮膜にLiFが多く存在することが示唆されており、この点は過去の研究報告例をよく一致していた。そこで本研究ではさらに踏み込み、電析リチウム金属のTEM観察を実施し、その表面皮膜の詳細な観察を試みた。観察には大気非暴露冷却ホルダーを利用することで、リチウム金属へのダメージを最低限に抑えつつ、TEM観察室内に試料の導入を行った。室温では、試料への電子線ダメージが非常に大きく、安定した観察は行えなかったものの、試料を冷却することで観察に成功した。STEM-EELS分析により、電析リチウム金属表面には厚さ約20nm程度の皮膜が形成されていることを確認し、またその主成分はLiFであることを確認した。さらにリチウム金属のEELSスペクトルの取得にも成功し、超マイクロ電極と、大気非曝露冷却ホルダーを併用することで、電析リチウム金属のTEM観察が再現良く行えることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部研究の進め方を変更した。当初の予定では、超マイクロ電極と干渉計測定とを結びつけ、電析時のリチウムイオン濃度測定を行う予定であったが、電析リチウム金属のTEM観察の方に重点を移すこととした。これは、利用している干渉計のソフトウェアの更新が難しく(干渉計自身が旧型であり、そのカメラのドライバが新しいソフトウェアとの互換性が取れないとメーカーより通達)、既存のソフトウェアの利用継続を余儀なくされていること、また、NIMS内の蓄電池基盤プラットフォームに導入されたTEM用の大気非曝露冷却ホルダーの利用を優先的にさせてもらえることとなったためである。干渉計による濃度分布測定もリチウム金属の電析現象の理解の上では、非常に重要であるが、電析リチウム金属上に形成されている表面皮膜の詳細解析は、世界中の研究者が挑戦し続けている非常に重要な課題である。そのため、今年度はTEMによる観察・分析に重点を置き研究を遂行した。その成果は研究実績の概要に記したとおりである。 干渉計測定に関しては、既存のソフトウェアで測定・解析が行える測定セルを試作し、リチウム金属の電析に伴う電極近傍でのリチウムイオン濃度分布形成過程のその場測定をすでに開始しており、令和2年度においては、こちらの実験・研究についても尽力する予定である。 以上のように、当初の予定より一部変更になったものの研究としてはおおむね順調に進展していると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究全体として、十分な進捗を得ていると考えており、令和2年度も引き続いて研究を遂行していく予定である。「現在までの進捗状況」に記した通り、干渉顕微鏡での測定に注力しつつ、TEMを用いた電析リチウム金属の観察・分析を進め、ナノスケールからマイクロスケールまでの一貫したリチウム金属電析反応のモデルの構築ができるよう、必要な知見の収集に努める。また、論文執筆の部分がやや遅れているため、最終年度でもある令和2年度は、これまでに得られた新しい知見を積極的に外部発表するよう努める。
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Research Products
(6 results)