2020 Fiscal Year Research-status Report
撮像面から観察面への写像を用いたレンズレスディジタルホログラフィック超解像顕微鏡
Project/Area Number |
18K04968
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
茨田 大輔 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (80400711)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 超解像 / ディジタルホログラフィ / 体積ホログラム / フォトポリマー |
Outline of Annual Research Achievements |
電子ビーム描画装置を用いて、可視光の波長以下の微細構造をもつテストターゲットの作製を行った。テストターゲットは、ラインアンドスペースパターンからなり、可視光で直接観察可能な大きなパターンと直接観察不可能な100nmのパターンを含むものとした。また将来的に細胞小器官などの透明物体を観察することを想定し、テストターゲットは、透明物体上の凹凸構造とした。 ディジタルホログラフィによる超解像イメージング方法として新しい方法を提案した。この方法では、観察対象の照明によって発生した信号波と信号をもたない参照波を重ね合わせる際に用いるビームスプリッターの代わりに、体積ホログラムを用いる。この体積ホログラムは、信号波の中の1点から広がる波を点の位置と一対一の対応関係にある波動ベクトルをもつ平面波に変換する機能をもたせる。体積ホログラムはこれらと参照波を重ね合わせる機能を有し、この干渉パターンをディジタルホログラムとして撮像素子で撮影する。そのディジタルホログラムを計算機で解析し、各平面波の振幅と位相を抽出することによって、微細パターンの再構成を行う。この方法では、これまでの研究で心配された実験的なノイズによるロバスト性低下を改善できる可能性がある。この原理に関して、体積ホログラム理論を用いたシミュレーションを行った。それによると、体積ホログラムの厚みが少なくとも1cm以上必要であることがわかった。 提案手法に使用する体積ホログラム用記録媒体の作製を行った。記録媒体として骨格となるポリマー中に光重合反応をする感光性のモノマーを分散させたフォトポリマーを作製した。骨格となるポリマーは、モノマーの状態でシリコーンゴムで作製した型に流し込み熱重合によって形成させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの影響で実験時間が十分にとれず、やや遅れている。ただし、実験ができない時間は、ここまでの結果で実験的なノイズによるロバスト性低下の心配があったが、それを改善するような新しい方法を提案する時間にあてた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果で、1)実験で観察するテストターゲットの作製、2)テストターゲットのパターンを再構成するための理論構築、3)実験で必要になる体積ホログラムを作製するための記録媒体の作製が完了した。今後はまず、3)の記録媒体を用いて体積ホログラムの作製を行う。体積ホログラムは1点から広がる光波とそれと一対一対応の波動ベクトルをもつ平面波の干渉パターンを露光することによって作製した。その際、1点から広がる光の位置を目標分解能となる40nm程度で横シフトさせ、それに対応して平面波の波動ベクトルを変化させながら多重に露光を行う。この露光装置は自動化を行い、100×100の10000多重露光以上で体積ホログラムの作製を行う。 上記の体積ホログラムにテストターゲットからの信号波と1点から広がる参照波照射し、平面波分布に変化された信号波と参照波の干渉パターンをディジタルホログラムとして撮像素子で撮影する。このディジタルホログラムを解析することによって、平面波分布を抽出し、その平面波分布の振幅と位相からテストターゲットのパターンを再構成する。また、その結果より分解能の評価を行う。分解能が十分でない場合は、記録媒体の厚みや体積ホログラム作製時の露光条件などを見直す。 分解能が十分である場合は、より微細なパターンを持つテストターゲットを作製し、可視光の波長の1/10程度である40nmの分解能をもつ超解像顕微鏡の実現を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス問題の影響による実験の遅れのために次年度使用額が生じた。体積ホログラムの作製のための材料費、テストターゲット作製のための電子ビーム描画装置使用料、データの解析のためのPC、得られた成果の発表にかかる経費に使用する予定
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