2018 Fiscal Year Research-status Report
屈折率が10以上の超高屈折率・無反射なテラヘルツ波帯材料の研究
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18K04970
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
鈴木 健仁 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60550506)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | テラヘルツ波 / メタマテリアル / メタサーフェス / 高屈折率材料 / 極限屈折率材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、屈折率が10以上の超高屈折率・無反射な極限屈折率材料を1~3THz帯で実現する。研究代表者は、2016年に0.3THz帯で屈折率12+j0.92、反射1.2%、透過92%の特性を有する超高屈折率・無反射な極限屈折率材料を、第6世代以降の移動通信システムでの利用も意図してテラヘルツ波帯で生み出した。さらに材料を光学コンポーネントへ応用し、2017年に両面構造ペアカットワイヤーアレーアンテナ(Double-sided paired cut wire array antenna)も創出[特開2017-034584]した。 0.3THz帯よりさらに高周波数の1~3THz帯でも室温・単一周波数の光源が報告され始めているが、テラヘルツ電磁波領域に適した材料の不足のため、高効率な光学コンポーネントが実現できていない。そこで、独自に生み出した超高屈折率・無反射な極限屈折率材料を高周波化する。計画している具体的な研究項目は、①テラヘルツ波帯の超高屈折率・無反射な極限屈折率材料の支配法則の解明、②材料の1~3THz帯での最適化設計、③テラヘルツ波帯での極限屈折率材料の作製法の体系化と機能の実証、の3つである。本研究で生み出される超高屈折率・無反射な極限屈折率材料の応用により、1~3THz帯光源用の高効率な光学コンポーネントの開発が加速することが期待される。 1年目は研究項目②と研究項目③に取り組んだ。研究項目②については、3THz帯での超高屈折率・無反射な極限屈折率材料の最適化設計を完了した。研究項目③については、スーパーインクジェットプリンタにより5umのポリイミドフィルムを用いて試作し、テラヘルツ時間領域分光法による実験で材料特性を評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究項目②については以下の通りである。超高屈折率・無反射な極限屈折率材料は、波長よりも小さな金属構造(メタアトム)を周期的に配列して、波長よりも十分に大きな全体構造を構成したメタマテリアル(メタサーフェス)である。一例として、メタアトムとして誘電体膜の表裏に金属ワイヤーを配置している。2umの誘電体基板の表裏にカットワイヤーを配置することで、3 THzで屈折率12.9+j1.88、反射9.0%、透過51%の極限屈折率材料を設計した。 研究項目③については以下の通りである。誘電体基板として、5umのポリイミドフィルムを用いた。3.0THzで屈折率8.1 + j0.9、反射6.7%、透過63.6%を設計した。表面と裏面のそれぞれに約79,000個のカットワイヤーをポリイミドフィルムの表裏両面の約6×6 mm2の範囲に描画した。試作はスーパーインクジェットプリンタ(SIJテクノロジ社製)を用いた。描画後、銀ナノインク(NPS-J)の導電率向上のため、220度で1時間焼成した。むらや短絡箇所などはあるが、おおむねポリイミド両面に対称にペアカットワイヤの形状を描画できている。インク焼成後の銀膜厚tはおおよそ140nmである。3.0THzの表皮厚は銀ナノインクの導電率より50nmである。テラヘルツ時間領域分光法(Toptica Photonics社Teraflash)により集光系で透過と反射を測定した。本内容については、2019年3月の応用物理学会[朝田, 鈴木, 2019年第66回応用物理学春季学術講演会, 11p-S421-17 (2019).]で報告した。
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Strategy for Future Research Activity |
3.0THz帯で高屈折率・低反射な極限屈折率材料を設計し、スーパーインクジェットプリンタで試作した。実験と解析ともに3.0~3.5 THzで位相遅れが大きくなる傾向は得ているが、現状では実験結果と解析結果に誤差がある。誤差の要因として、A.実験誤差、B.試作誤差、C.材料誤差の3つが考えられる。Aではテラヘルツ時間領域分光法による実験での反射位相測定時の誤差とダイナミックレンジの影響が考えられる。Bでは寸法誤差と形状誤差が考えられる。Cでは銀ナノインクの実効導電率の低下が考えられる。引き続き、実験結果と解析結果との誤差要因の検討を進める。また、今回は初回の試作のため、繰り返しの試作が可能な特長を有するスーパーインクジェットプリンタを用いて引き続き試作を進める。
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Causes of Carryover |
(理由) 1年目の費用は主に研究項目②材料の1~3THz帯での最適化設計と研究項目③テラヘルツ波帯での極限屈折率材料の作製法の体系化と機能の実証に使用した。研究項目②は完了したが、研究項目③では試作工程を構築中のため、次年度使用額が発生した。 (使用計画) 研究項目③テラヘルツ波帯での極限屈折率材料の作製法の体系化と機能の実証に使用予定である。
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Research Products
(10 results)