2019 Fiscal Year Research-status Report
ラマンスペクトル変化の深層学習による細胞の力学応答解析手法の開発
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18K04977
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
安國 良平 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 助教 (40620612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新岡 宏彦 大阪大学, データビリティフロンティア機構, 特任准教授(常勤) (70552074)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フェムト秒レーザー誘起衝撃力 / メカノレスポンス / 単一細胞解析 / 顕微蛍光分光 / 緑色蛍光タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで申請者が培ってきた集光フェムト秒レーザーを用いた動物細胞への力学的刺激の付加、顕微分光技術による細胞の生理応答測定、ディープラーニングによる解析を組み合わせ、細胞が識別している本質的な力学的刺激の詳細を明らかにする新しい手法を開発し、細胞の力学応答の作動機構の解明を目指している。 昨年度は細胞近傍の培養液中へ集光したフェムト秒レーザーが発生させる衝撃力の作用の時空間プロファイルに関してに詳細な評価を行った。平成31年度は、この衝撃力を細胞に作用させた場合の生理応答に関して顕微蛍光イメージングによる評価を行った。 緑色蛍光タンパク質(GFP)を導入したマウス筋芽細胞(C2C12)にレーザー誘起衝撃力を作用させ、その前後の蛍光スペクトルと蛍光イメージの変化を測定した。その結果、衝撃力の作用後に細胞内に発現したGFPの蛍光スペクトルは変化しないものの、蛍光強度は変化し、この変化量は細胞内の核や細胞質のような細胞内小器官によって異なる様子が観測された。さらにこれらの応答は衝撃力の作用強度にも依存することが確認された。GFPの蛍光強度は細胞内の局所環境に依存することが知られており、観測されたGFPの蛍光強度変化はレーザー誘起衝撃力によって誘導された細胞状態の変化を反映していると考えられる。また同様の傾向は他のサル腎臓由来のCOS細胞でも確認された。 本結果は、簡単に測定可能なGFPの蛍光像の変化パターンで刺激に対する細胞状態変化の評価が可能であることを示しており、細胞制御に向けて重要な成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はレーザー誘起衝撃力により変化した細胞の状態に関して蛍光スペクトルとラマン散乱測定行い、機械学習により細胞状態に変化を与えるレーザーパラメータのクラスター化を行う計画であった。 細胞のラマン散乱をベースとした解析に関しては、既存の分光システムでは十分なシグナルを得ることが困難であったため実行が困難であった。しかし蛍光イメージングを用いた手法では、細胞状態の変化を可視化することに成功しており、照射するレーザーパラメータに依存した細胞状態変化も明らかなっていることから、計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度では蛍光イメージングを用いた細胞状態の評価手法と、誘導される具体的な分子応答の探索に重点をおき、レーザーを用いて細胞状態を任意の状態へ変化させる方法論を開発する。スペクトルデータの解析から画像解析を主とした方法へのシフトに伴い、機械学習や深層学習に加えて、数理モデルを使った方法を新たに導入し、レーザー刺激に誘導される具体的な分子応答の解析を行う。
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Causes of Carryover |
実験計画の変更により当初予定していた光学素子の購入が少なったことに加え、参加を予定していた学会などのキャンセルにより旅費が抑制された。次年度には実験計画の変更に伴って必要となる試薬の購入を予定している。
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