2019 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical research on topological resonant states in plasmonic crystals
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18K04979
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
西田 宗弘 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (10329112)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | プラズモニクス / トポロジー / 共鳴状態 / 連続準位中束縛状態 / 例外点 / 偏光渦 / ファノ共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,誘電体導波路とプラズモニック結晶の接合系における連続準位中束縛状態(BIC)と例外点に関して多くの知見が得られた. まず,1次元金属グレーティングを用いた系において,BICと例外点の存在を確認し,その特性について重要な知見が得られた.誘電体導波路中のモードとしてTE偏光を用いるかTM偏光を用いるかによって,モード間の結合係数の符号が異なり,入射光の偏光を変えるだけでBIC発現ブランチを反転させられる事が分かった(New J.Phys.21,113020).さらに,モード間の結合係数は,グレーティング膜厚を変えることで連続的に変化させられることが分かり,結合係数の符号変化に伴ってBIC発現ブランチが反転することが明らかになった(arXiv:2001.08008).符号変化の近傍に例外点が存在することも分かり,共鳴状態のバンド構造が例外点を介してトポロジカルに変化し,その影響でBICの発現ブランチが反転していることが分かった.この発見は,BICと例外点がバンドのトポロジーによって関係づいている事を示しており,共鳴状態のトポロジーの一般論を構築する上で重要な知見を与えたと言える. 次に,金属ナノホール列と誘電体導波路の接合系において,共鳴状態からの放射場の偏光を調査し,BICと例外点のまわりで特異な渦構造が形成される事を明らかにした.この渦構造のトポロジカル指数を評価することにより共鳴状態バンドのトポロジーを特徴づけることが可能と考えられ,今後の大きな進展が期待できる. その他の研究成果として,Fano共鳴を利用した金属初期腐食検出法の理論的な基礎の確立(Phys.Rev.B,101,085414),及び,プラズモニック・バンド構造の特異性によるビーム状の表面プラズモン伝搬の発見(論文執筆中)などが挙げられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では,中心穴のある蜂の巣格子の構造を変化させることによりバンド反転を起こしトポロジカルに非自明な状態を形成することを想定していたが,今回の発見により,偏光や金属膜厚を変えるだけで,1次元金属グレーティングの様なよりシンプルな構造でもバンド反転が起こせる事が分かり,より簡便に共鳴状態のトポロジーを調べることが可能になった.当初の予定通りの研究成果とはなっていないが,研究課題の目標である共鳴状態のトポロジーの解明にはより近づいたという感触を持っている. また,トポロジーの指標として,共鳴からの放射の偏光渦が利用出来るという見通しが立ったことも大きい.これに関してはまだ論文を準備している段階だが,技術的な困難は残っていないため,今後のスムーズな進展が期待できる.トポロジー指標を確立できれば,構造変化によるトポロジーの変化を系統的に調べることが可能になる. 以上のことから,これまでの研究成果により,シンプルな系で共鳴状態のバンドの大域構造を系統的に探求することが可能になった.よって,後半の目標だった共鳴状態のトポロジーに対する一般論の構築に向けての準備はほぼ整ったと言え,研究はおおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
まず最初に,現在執筆中の表面プラズモンビームの論文を完成させる.プラズモンビームは偏光依存性を持つことが分かっており,偏光渦構造の調査のための有力な手段となると考えている. 次に,1次元グレーティング系でのバンド構造のトポロジーを波数と金属膜厚の2次元空間内で詳細に調べ,BICと例外点のトポロジカルな関係を明確にし,論文にまとめる.既にかなりの計算結果を得ているが,結果を説明するシンプルなモデルを時間的結合モード法を応用して構築し,一般的な規則にまとめる予定である. さらに,金属ナノホール列と誘電体導波路の接合系におけるの放射の偏光渦構造を系統的に調べ,BICと例外点周辺の巻数に関する規則を定式化する.特に,金属グレーティングの研究成果から,金属膜厚とナノホールの大きさはモード間の結合係数を変える重要なパラメータと考えられる.これらのパラメータを変化させた時の巻数変化を探ることにより,巻数の規則に関する指針が得られると考えている. 最終年度となる次年度は,これらの知見を共鳴状態のトポロジーに対する一般規則としてまとめると共に,それを用いた新規ナノ光デバイスの考案を行いたいと考えている.
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Causes of Carryover |
応用物理学会が開催されず,旅費の支出が生じなかったため.翌年度の謝金の支出に充当する予定である.
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