2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of a molecularly-modulated continuous-wave Raman comb
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18K04982
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
財津 慎一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60423521)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光変調器 / 誘導ラマン散乱 / 四光波混合 / 超高繰り返しレーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最近実証された「連続発振分子光変調器」を基礎とし、近赤外波長域で70THzを超える帯域に、10THzを超える間隔で発生する「連続発振ラマンコムの実現」に取り組んでいる。この研究目的を達成するために、初年度は以下の2項目の実験を実施した。(1)分子光学変調のための2波長共振ポンププローブ光学系の構築、(2)連続発振ラマンコムの時間領域特性測定のための干渉型自己相関計測系の構築。以下にそれぞれで得られた実績の概要について示す。 (1)共振器内に充填された気体分子のコヒーレント運動を励起するための外部共振器型半導体レーザーと、コヒーレント分子運動をプローブし、連続発振ラマンコムを発生させるための波長可変単一周波数Ti:Sapphireレーザーの2波長を、同時に水素分子の充填された高フィネス共振器へ結合する光学系を構築した。半導体レーザーの発振周波数を、Cs原子のD2線(852.1 nm)へゼーマン変調法でロックし、周波数安定化された2台のレーザー光を共振器へ結合することに成功した。 (2)ラマンコムが構成する尖頭出力の弱いテラヘルツパルスに対して非線形自己相関計測を実現するために、近赤外連続発振光を光源とした場合に第二次高調波が発生する最小パワーが1mW以下であることを明らかにした。さらに、マイケルソン型干渉計を新たに構築し、共振器中の誘導ラマン散乱と四光波混合により発生したラマン光の干渉によって得られる繰り返し周波数17.6 THzの超高繰り返し超短光パルス列の自己相関波形を測定した。二波長と三波長で波形が変化すること、また位相を変化させると波形も変化することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画での平成30年度終了時点での達成目標は、最終目標に至る3STEPにおける、STEP1:分子光学変調のための2波長共振ポンププローブ光学系の構築、であった。実際には、研究実績の概要に示したように、(1)分子光学変調のための2波長共振ポンププローブ光学系の構築、(2)連続発振ラマンコムの時間領域特性測定のための干渉型自己相関計測系の構築、を達成した。当初計画に記載していた(1)に加えて、(2)の計測系の構築も達成したため、当初の計画以上に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、前年度の成果を受けて、以下の研究課題に取り組む。 1.分子光変調法による高次ラマンサイドバンドの観測 現状では、ポンププローブ法による分子光変調過程によって、1次のサイドバンドが観測されているのみである。目標となるラマンコムの発生のためには、2次以上の高次ラマンサイドバンドの発生が必要である。これを実現するために、共振器ラマン媒質充填圧力とプローブ波長の最適化による、共振器内総分散制御を実施する。これにより分子光変調過程の位相整合条件を満足させ、これまでは観測できなかった2次のラマンサイドバンドを発生させる。 2.低分散高フィネス共振器を用いた分子コヒーレンス励起とサイドバンドの観測 これまでの実験では、1回反射した時に付与される負分散が-9 fs^2程度の高反射鏡(反射率:0.9997 (750~920 nm))で共振器を構成していた。そのために、共振器内の総分散をゼロとするためには、9気圧程度の高い密度の分子を利用する必要があった。しかしながら、これは共振器長を半往復する際の位相不整合を大きくし、光波変調効率の低下をもたらしていた。この問題を解決するために、共振器鏡として、-1fs^2程度の負分散を有した高反射鏡を利用し、1気圧程度の圧力の分子で構成される分散補償型共振器を用いる。分子密度の低下に伴って、変調効率を決定づけるラマンゲイン係数も低下するが、これは衝突緩和の減少に伴うゲインライン幅の狭窄化で補う。
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Causes of Carryover |
計画当初導入を予定していたテーパー付き半導体増幅器(Thorlabs社製TPA850P10、見積もり価格\853,632)が生産終了となった。検討の結果、現有装置である半導体レーザーを代用として使用することで、研究の目的を達成可能であろうという結論に至った。しかしながら、この代用光源の適切な使用のための光学系が必要であり、想定していた金額の一部を今年度に使用し、その他必要な光学系を構築するための費用を来年度へ繰越して使用することとした。
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Research Products
(2 results)