2020 Fiscal Year Research-status Report
Development of a molecularly-modulated continuous-wave Raman comb
Project/Area Number |
18K04982
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
財津 慎一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (60423521)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 光変調器 / 誘導ラマン散乱 / 四光波混合 / 超高繰り返しレーザー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最近実証された「連続発振分子光変調器」を基礎とし、近赤外波長域で70THzを超える帯域に、10THzを超える間隔で発生する「連続発振ラマンコム の実現」に取り組んでいる。この研究目的を達成するために、本年度は以下の2項目の実験を実施した。(1)連続発振分子光変調器出力の自己相関波形測定、(2)連続ラマンサイドバンド間の位相差測定。以下にそれぞれで得られた実績の概要について示す。 (1) 連続発振分子光変調器によって17.6 THzの周波数で変調された連続発振光の時間波形を評価するために、マイケルソン型の干渉計を用いた非線形自己相関波形測定光学系を構築した。変調媒質となる水素分子を7.70 atm充填した分散補償光共振器で変調されたを連続発振光を、この干渉型自己相関法により測定した。その結果、パルスの時間間隔56.8 fs、パルス幅23.1 fs という測定値を得た。この結果はスペクトルから予想される計算値とよく一致し、被変調連続発振光が、超高繰り返し超短光パルス列へと変換されていることを明らかにした。 (2) 測定された超高繰り返し超短光パルス列を構成するラマンサイドバンド間の位相差について、ガラスプリズム対を用いる光路変化を利用した測定を実施した。その結果、ラマンサイドバンド間の位相差を変化させると、2波長干渉時は自己相関波形の光強度が変化しない一方、3波長干渉時はそれが変化することが明らかとなった。また、本実験条件においてガラスプリズム対の厚み13 mm、25 mm のとき超短光パルス列の位相差が2nπ、厚み19 mm の時、位相差が(2n+1)πであることを示した。シミュレーション結果と比較により、本研究で発生させた超高繰り返し超短光パルス列が、共振器から検出器までの過程でガラスプリズム1 mm分ほどの位相のずれを生じていることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画での実施3年度目終了時点での達成目標は、高次分散を抑制した共振器を用いた高次ラマンサイドバンド発生であった。今年度は、その目標を達成するために、新たに設計・作製した低分散鏡を用いた光変調器を構築し、連続発振光励起によるラマンサイドバンドの発生を試みた。結果として、コロナ禍による実験時間確保の困難さもあり、ストークス側のサイドバンドの発生には成功したものの、アンチストークス側のサイドバンドの発生には至らなかった。しかしながら、研究実績の概要に示したように、(1)連続発振分子光変調器出力の自己相関波形測定、(2)連続ラマンサイドバンド間の位相差測定を達成した。 (1)の成果は光シンセサイザーへの研究展開のために必要な技術であり、また、この成果(1)に加えて、(2)の位相差測定についても達成したため、概ね順調時進展していると評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、前年度の成果を受けて、以下の研究課題に取り組む。 1. 高次分散抑制低分散高フィネス共振器を用いたラマンサイドバンドの観測 現状では、高次分散抑制低分散高フィネス共振器に充填した水素分子(1 atm)によって、ストークス側に1次のサイドバンドが観測されている。本研究では、アンチストークス側のラマンサイドバンド、および、2次以上の高次ラマンサイドバンドを含むラマンコムの発生を目的としている。これを実現するために、共振器ラマン媒質充填圧力とプローブ波長の最適化による共振器内総分散制御を実施する。これにより分子光変調過程の位相整合条件を満足させ、これまでは観測できなかったアンチストークス側ラマンサイドバンドと高次のラマンサイドバンドを発生させる。令和2年度には、-1fs^2程度の負分散を有した高反射鏡を用いた気体充填光共振器を構築した。これにより、共振器長を半往復する際の位相不整合を小さくし、光波変調効率の向上をもたらすことが可能となる。 2. 連続発振分子光変調器により発生させた超高繰り返しレーザーパルス列の位相差測定 これまでに構築したマイケルソン干渉計を用いた非線形自己相関計によって、発生したラマンサイドバンド間の位相が安定した超高繰り返しレーザーパルスが発生していることが示された。この計測器を拡張することによって、ラマンサイドバンド間の相対位相を定量的に測定する計測器に発展させる。具体的には、干渉計の出力に設置した第2高調波発生系出力のスペクトルを測定する。光路上に設置したプリズム対を走査することによって、付加的な位相変化を与えながら、この第2高調波発生のスペクトルの変化を記録する。正弦的に変化するスペクトル強度から、ラマンサイドバンド間の相対位相を計算により算出する。これにより、光シンセサイザーへ応用する際に重要な位相差測定へと繋げる。
|
Causes of Carryover |
令和2年度に予定していたび新規共振器鏡は導入することができたが、コロナ禍の状況下で、研究の進行状況の遅延もあり、その他の計測器等の導入は後ろ倒しし、令和3年度に導入する予定である。また、同様の理由で予定された出張がキャンセルされ、旅費の支出をすることができなかった。そのために次年度使用額が生じている。
|