2018 Fiscal Year Research-status Report
高安定レーザの作製による光ポンピング磁気センサの高性能化
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18K04989
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高見澤 昭文 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50462833)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光ポンピング磁気センサ / 外部共振器半導体レーザ |
Outline of Annual Research Achievements |
光ポンピング磁気センサの実験系を作製し、磁場を測定した。光源として、バンドパスフィルタを用いて波長選択し、アライメントに鈍感なキャッツアイ配置を持つ波長894 nmの外部共振器半導体レーザを作製した。ここで、レーザのパッシブな周波数変動を抑制するために、位置微調器具を使わないことで機械的に安定させ、筐体で密閉して大気圧変動の影響を抑制した。環境磁場を遮蔽するための磁気シールドの中に10 torrの窒素をバッファガスとするセシウムガスセルを設置し、ソレノイドコイルにより5マイクロT程度の一様な静磁場をかけた。セシウム原子のD1線に同調させたレーザを光ファイバを通じて磁気シールド内に導入し、ガスセルに円偏光で照射した。そして、ガスセル透過後のレーザを別の光ファイバを通じて磁気シールドから取り出し、フォトディテクターでパワーを測定した。ここで、ヘルムホルツコイルを用いてガスセルに静磁場とは別の交流磁場を印加した。交流磁場の周波数がセシウム原子のラーモア周波数に同調するとガスセルによるレーザ吸収の変化量が最大となる。測定されたレーザパワーをロックインアンプを用いて復調することにより得られる交流磁場の周波数に対する分散曲線からラーモア周波数がわかり、それに比例する静磁場が測定された。静磁場の変化に対する信号の変化を示す分散曲線の傾きと、分散曲線のゼロクロスでのノイスのパワースペクトル密度から、磁場測定の感度は1 Hzから500 Hzまでの周波数帯域において2 pT/Hz^(1/2)と見積もられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必要となる光ポンピング磁気センサの実験系を作製して、かなり高い感度(2 pT/Hz^(1/2))で磁場を測定することができた。磁気シールドのなかでは余分な磁場を発生させないように非磁性の材料のみでジグ等を構築する必要があるが、そういった課題をクリアし、実験系を構築して磁場を測定できたことは今後の進展につながる。光源の周波数安定度などが磁気センサの感度に及ぼすのは数100 fT/Hz^(1/2))以下であると考えられ、それに比べて1桁だけ足りない状況であり、実験開始から1年目としては今後十分に期待できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは光源以外の感度を悪化させている要因を取り除くとともに、様々な実験パラメータを最適化して感度を数100 fT/Hz^(1/2)まで向上させる。現状ではガスセルの温度調整のためのヒータから生じる磁場が感度を悪化させていることがわかっている。温水を流すなどの方法を検討し、実装してこの問題を解決する。また、レーザの強度、交流磁場のパワーおよびガスセルの温度など、最適化すべき実験パラメータが数多くある。パラメータを変えて周波数vs信号曲線やパワースペクトル密度を測定し、パラメータを最適化する。 光源以外の感度の悪化要因を十分に取り除くことができたら、レーザの周波数安定度やパワー安定度に対する磁気センサの感度を実験的に調べ、感度向上のために必要となる周波数安定度やパワー安定度を外挿する。これをもとに、外部共振器半導体レーザの仕様を決め、設計製作にあたる。
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Causes of Carryover |
当該年度(初年度)はすでに所有している物品を利用して実験系を組み立てるつもりであったため、元々請求額が少なかった。少額の消耗品を購入するのに当てようと思っていたが、予想していたよりも新たに購入するべき物品が少なく、かつ少額だった。 来年度はまず温水ヒータが必要であるが、もともと購入を予定していなかった装置であるため、当該年度の残額を当てることで調達する予定である。
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