2019 Fiscal Year Research-status Report
高安定レーザの作製による光ポンピング磁気センサの高性能化
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18K04989
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高見澤 昭文 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 主任研究員 (50462833)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 光ポンピング磁気センサ / 外部共振器半導体レーザ |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度作製した光ポンピング磁気センサでは、ガスセルを50℃程度まで温めるためのヒーターの電流から発生する不要な磁場が影響したため、高い感度を得るためにはヒーターの電流をオフにする必要があった。そのため、数分しか感度を維持することができず、感度の向上を図ることが困難であった。そこで、温水を流す方式を採用し、さらに、人間の心臓磁場の測定を想定して磁場発生源にセンサ部であるガスセルを近づけられるように、センサヘッドを再作製した。ガスセルを加熱するために、内部に水を流すための管が設けられた銅製のプレートを温水で温め、プレート上に置かれた銅製のジグを通じてガスセルに熱を伝導させる。また、レーザーを導入するための光ファイバーや周辺光学部品やそれらのジグは非金属で作った。また、ガスセルの中心を磁場発生源から25 mmの距離に近づけることができる。 さらに、実験室環境下に置かれた磁気シールド内において、微弱なパルス磁場がどのように観測されるかを確かめるため、コイルに電流を流すことにより発生する幅30 msで1 s間隔の100 pTのパルス磁場を、市販の感度1 pT/√Hzの光ポンピング磁気センサ2個を用いて測定した。ただし、環境磁場変動の影響を取り除くため、メインおよび参照用のセンサをそれぞれコイルから50 mmおよび110mm離れた位置に置き、両者の差を取った。この測定の結果、100 pTのパルス磁場を十分に観測することができたが、感度1 pT/√Hzを超える約10 pTのノイズレベルが存在した。周波数50 Hzの電源系統のノイズが影響していると考えられ、これを除去するためのフィルターや数理解析法が必要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水漏れ無く、かつ非磁性の材質を用いて温水でガスセルを温めるシステムを作るのに苦労したが、センサヘッドを作製することができた。ヒーターの電源をオフにしてから数分しか感度を維持できなかった前バージョンと異なり長時間動作できるため、レーザーの強度や周波数、および振動磁場の強度などのパラメータの最適化をしやすくなり、レーザーの周波数や強度の安定度が影響してくると考えられる10 fT/√Hz程度への感度の向上を図ることができる。また、レーザーの周波数や強度の安定度の影響を評価するためにも長時間磁気センサを動作させることが必須であるため、今回のセンサヘッドの改良は重要なステップであったと言える。また、市販のセンサを利用したパルス磁場の測定により、人間の心臓磁場の測定などの応用を見据えた研究に進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、作製したセンサヘッドを用いて、パラメータを最適化し、磁気センサの感度を10 fT/√Hz程度まで向上させる。その後、原子のスピン偏極の生成や検出に用いるレーザについて強度や周波数の安定度を評価するとともに、測定された磁場のパワースペクトル密度などとの比較によって磁気センサの感度への影響を評価する。その結果を基に、光源である外部共振器半導体レーザを改良し、さらなる感度の改善につなげる。
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Causes of Carryover |
センサヘッドの作製には、非磁性物品の選定や、水漏れの確認と継ぎ手の改良といったことが必要であったが、労働力が大きくかかった一方で、物品の金額はそれほど大きくなかった。これから行う予定の磁気センサのパラメータの最適化や外部共振器半導体レーザの改良のために、低ノイズの電気信号測定器や光検出器などの購入に利用する予定である。
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