2018 Fiscal Year Research-status Report
低線量放射線の健康不安対策としての被曝と精神的ストレスによる脳への影響の比較評価
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18K04994
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山岡 聖典 岡山大学, 保健学研究科, 教授 (00314683)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片岡 隆浩 岡山大学, 保健学研究科, 助教 (40509832)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | X線 / 強制水泳試験 / 酸化ストレス / 無動時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,東電福島第一原発事故に伴う被曝の影響と精神的ストレスの影響を,酸化ストレスに着目し明確にすることである。すなわち,低線量率γ線照射または高線量率X線照射による脳の酸化ストレス,精神的ストレスによる脳の酸化ストレス,照射と精神的ストレスの併用による脳の酸化ストレス,およびこれらの酸化ストレスを予防・改善するための抗酸化物質の投与方法について検討することである。このうち,平成30年度は,高線量率X線照射と精神的ストレスの併用によるうつ病症状に及ぼす影響について検討した。 すなわち,マウスにSham(疑似),0.1,0.5,1.0,2.0 GyのX線を各々照射した。その後,直径10cm,高さ25cmの円柱に水深が15cmになるように25±1℃の水を入れ,マウスに10分間の強制水泳をさせた。2,3,4,5日目にも同様に強制水泳させた(事前照射)。また,5日間の強制水泳試験3日後(最初の強制水泳試験から8日後)に,マウスにSham,0.1,0.5,1.0,2.0 GyのX線を照射した。その4時間後に10分間の強制水泳試験をした(事後照射)。 その結果,事前照射をした場合,0.1Gy照射より強制水泳時間中の無動時間が短かったことから,0.1GyのX線照射は強制水泳試験により誘導されるうつ病症状を緩和することがわかった。他方,無動時間は0.5,1.0,2.0Gy照射とshamの間に有意差はなかった。事後照射をした場合,最初の強制水泳試験から8日後の無動時間は,0.5Gy照射した方がshamに比べ短かった。他方,無動時間は0.1,1.0,2.0Gy照射とshamの間に有意差はなかった。 以上の所見より,事前または事後の低線量X線照射は,強制水泳試験により誘導されるうつ病の症状を改善することが示唆できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精神的ストレスの負荷として強制水泳試験を用いた。このモデルはうつ病の症状を誘導する方法として一般的に用いられている。我々は今までに,ラドン(α線を放出する気体)吸入により強制水泳試験に伴い誘導されるうつ病が改善し,脳の酸化ストレスが軽減することを報告してきた。今年度は,高線量率X線の事前または事後照射による強制水泳試験に伴ううつ様症状に与える影響について,線量依存性について検討できた。その結果,高線量率X線の事前または事後照射により,うつ病の症状が改善することが示唆できたことから,おおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,高線量率X線照射による強制水泳試験に伴う無動時間に及ぼす影響について検討した。31年度では,30年度で採取した脳のサンプルの酸化ストレスの分析をするとともに,電力中央研究所の低線量率γ線照射装置を用い,強制水泳試験に伴う無動時間に及ぼす影響と,強制水泳試験・照射に伴う脳の酸化ストレス状態の分析をする。また,低線量・高線量率X線照射と抗酸化物質の併用により,強制水泳試験に伴ううつ病の症状や酸化ストレスが軽減されるか否かについて検討する。
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Causes of Carryover |
電力中央研究所で低線量率γ線照射実験をする予定だったが,次年度に延期したため次年度使用が生じた。電力中央研究所での動物実験の準備ができたため,次年度に低線量率γ線照射実験を実施する。
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