2019 Fiscal Year Research-status Report
放射性廃液から陰イオンを選択的に分離回収できる配位高分子の開発
Project/Area Number |
18K05004
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
南川 卓也 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 先端基礎研究センター, 研究職 (30370448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 鉄兵 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10404071)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 配位高分子 / MOF / イオン分離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、汚染水や高レベル放射性廃液などに含まれる放射性イオン等をこれまでにはない高い選択性で分離することを目的に実験を行っている。本研究では細孔制御が可能なMOFを用い、細孔のサイズを精密制御することで、これまでに高い選択性でイオンを分離することを目指している。 令和元年度の結果により、陰イオンの分離において、細孔サイズの小さなMOFは、分離の選択性が極めて低いことが明らかとなった。同時に、選択性が得られるサイズの細孔は、MOFとしては非常に大きく、細孔安定性が低くなるため(capillary-force による分解)、通常のMOFでは選択的分離が困難であることが明らかとなった。 放射性の陽イオンの分離においては、SrやCsに対してMOFの細孔サイズが適合し、非常に高い選択性で放射性元素を分離回収できる可能性を示し、非常に有用なデータが得られた。これらの結果から、現在2報の論文を執筆すると同時に、この性質を利用して、放射性元素と同様に有害元素となるものの分離も同時に進行している。 また、本研究はMOFによってこれまでになく精密制御できる細孔を利用する研究であるが、これを様々な材料に応用し、放射能センサーや分離技術に応用する実用的な側面も行っている。この結果、MOFにはこれまでにない元素分離回収能力があることを明らかにした。また、実用化への技術開発と同時に、昨今の緊急の課題を考慮し、コロナウィルス対策などさらに一般的な課題にこの技術を利用できる可能性も探りながら、世界に役立つ技術開発を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は、当初計画以上に研究が進展し、放射性の陽イオンとなるSrやCsに対しては、MOFの細孔サイズが適合し、非常に高い選択性で放射性元素を分離回収できる可能性を示した。これらは、これまでに報告のない非常に有用なデータであり、ハイインパクトな論文を執筆中である。
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Strategy for Future Research Activity |
MOFによる放射性の陽イオンの分離についてはSrやCsの分離に関して2報の論文の執筆を急いでいる。MOFによる放射性の陰イオンの分離については、細孔が大きなMOFを使えば選択的な分離の可能性もあるが、物理的な安定性が低いため、実用的な分離技術とならない可能性が高いことが課題となる。 そこで、細孔の大きさを制御する手法を使いながら、MOFだけでなくポリマーなどを用いた分離方法の開発を同時に行う。これまでの研究から、ナノ以上の疎水的な構造をもった細孔がMOFの陰イオンの分離には有効な傾向があることから、このような条件を満たす材料を探り、陰イオンの選択的分離を目指す。 また、陽イオンの選択的分離がMOFで行われた例は少ないため、これをセンサーとして利用する方法を同時に探りながら、出来るだけ広く一般利用可能な分野で、MOFによるイオン分離を応用する手法を探る。MOFは陽イオンの選択的分離が可能であるため、特に環境汚染を引き起こしている重金属を取り除く研究を中心に、この材料の利用を探る。同時に喫緊の課題であるコロナウィルス対策等にも、MOFのようなナノ細孔構造を利用できないかを探る等、現状の危機に見合った研究を同時に考慮する予定である。
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Causes of Carryover |
令和元年度における研究協力者の所属変更等に伴い、当初計画で購入を予定していた本事業に必要な設備の購入を令和2年度に持越したこと等、研究計画の変更が発生したため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は令和2年度分経費と合わせて、本事業に必要となる設備の購入に係る費用として使用する。
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